1994 Fiscal Year Annual Research Report
アドリアマイシンの核DNA結合能による多剤耐性悪性骨軟部腫瘍の検出
Project/Area Number |
05671224
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Research Institution | KYOTO PREFECTURAL UNIVERSITY OF MEDICINE |
Principal Investigator |
楠崎 克之 京都府立医科大学, 医学部, 講師 (30177993)
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Keywords | アドリアマイシン / 核DNA / 蛍光 / 悪性骨軟部腫瘍 / 薬剤耐性 |
Research Abstract |
本年度は平成5年の研究で確立したヒト悪性骨軟部腫瘍材料を用いたAdriamycin Binding Assay(ABA)を実際の臨床症例に応用して感受性の有無を評価し、これと実際に行なった化学療法の効果を比較して本法の臨床的有用性について検討した。感受性の評価は蛍光顕微鏡視下にB励起でFDAの緑色の蛍光を発する生きた細胞(生細胞)のうちG励起で核内に明らかなアドリアマイシン(ADR)の赤色蛍光を有する細胞を感受性細胞、そうでないものを抵抗生細胞として測定し、全生細胞中の感受性細胞の出現頻度を%ABで表わして行なった。検索した症例は総数44例で、悪性骨腫瘍26例、悪性軟部腫瘍18例であった。本研究から以下のことが分かった。初回化学療法後に遠隔転移を生じた例では11例中10例が80%以下の%ABを示しておりこれらは全て臨床的にその後の化学療法にも抵抗性で予後不良であった。また、原発巣と転移巣を同時に有する例も臨床的に化学療法に抵抗性で予後不良であったがこれらの%ABも全て80%以下で平均で31.3%ときわめて低い値であった。この二つの結果からは%ABの低い腫瘍は薬剤耐性である可能性がきわめて高いと結論できる。一方、転移のない原発腫瘍例で術前後の化学療法を施行した症例のうちDODの3例の%ABは平均8.0%と低く前述の結論と一致したがCDFの6例の%ABは80%以下のものが3例あり50%の確率であった。なお、初回化学療法後に単発転移を生じたNEDとDOCの2例は%ABが80%以上であったが、この2例はほかのDODの症例とは臨床経過が異なり化学療法に反応していたが化学療法が不十分であったための転移と考えている。しかし、これらの原発腫瘍11例の術前化学療法の効果と%ABの関係を検討してみたところ切除標本のほとんどが壊死に陥っていた4例は全て%ABが80%以上であったのに対し、生き生きとした腫瘍細胞が明らかに残存していた7例の%ABは1例だけが90%を示したが、ほかは80%以下で7例の平均でも26.9%ときわめて低かった。この結果はABAが化学療法の効果とほぼ一致していることを示している。以上のように本研究で開発したAdriamycin Binding Assay(ABA)はヒト悪性骨軟部腫瘍の多剤耐性腫瘍を検出する優れた薬剤感受性試験であり、簡便で迅速に判定でき臨床応用に適していると結論した。
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[Publications] 式田年晴: "骨肉腫におけるP-glycoproteinの発現とプロイディ・パターンの関連" 中部日本整形・災害外科雑誌. 36. 1593-1594 (1993)
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[Publications] Mark C. Gebhardt: "An assay to measure adriamycin binding in osteosarcona" J.Orthopaedic Research. 12. 621-627 (1994)
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[Publications] 竹下秀之: "OS NOW 18 骨腫瘍の診断と治療-最近の知見を中心に-" メジカルビュー社(印刷中), (1995)