1995 Fiscal Year Annual Research Report
人工股関節置換術後の弛みと骨吸収因子との相関及び骨形成因子を用いた予防的研究
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05671233
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
黒木 良克 昭和大学, 医学部, 教授 (00053794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 淳慈 昭和大学, 医学部, 助手 (70255834)
今里 有紀彦 昭和大学, 医学部, 助手 (00221094)
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Keywords | Aseptic loosening / Radiolucent area / Osteolysis / Bone resorption / Macrophage |
Research Abstract |
人工股関節置換術後、X線像上implant周囲に認められる骨透亮像の形成機序について着目し、骨透亮像をlinear typeとerosive type(いわゆるosteolysis)の2群に分類して、組織学的・生化学的な比較分析を行った。その結果、破骨細胞が活性化されて骨吸収が進行する系と、biomechanicalな要因による系が存在することが判明した。そこで前者の系の骨吸収のメカニズムを検討するために、osteolysisが認められる症例のimplant周囲組織を酵素処理により細胞を分離し、12時間から7日間培養後、NSE染色、TRAP染色、抗vitronectin receptor抗体および抗p60^<c-src>抗体を用いた染色を行い、細胞形態ならびに機能を観察した。さらに、分離した細胞を象牙切片上でNSEおよびTRAP染色を行い、また、破骨細胞が骨吸収面に形成するF-アクチンリングを検索するためにrhodamine-phalloidin染色を行った。さらに、超音波処理にて細胞を除去後、H.E.染色を行い吸収窩を観察した。 osteolysis症例のimplant周囲組織では、生化学的にはIL-6、 IL-8が他症例に比べ高値を示し、また組織学的にはTRAPで強く染色されるmacrophage系細胞が多数観察された。組織中のIL-6が高値を示した症例は、macrophage、滑膜細胞、血管周囲が抗IL-6抗体で強く染色された。細胞培養においては、2時間培養後に付着していた細胞は、TRAP陽性細胞に比べNSE陽性細胞が優位であり、時間の経過と共にTRAP陽性細胞が増加してゆく傾向にあった。しかし、TRAP陽性細胞は、NSEにおいても染色され、吸収窩の形成ならびにF-アクチンリングの形成もほとんど観察されなかった。 以上より、osteolysisの発生に関して、macrophageはサイトカイン、特にIL-6、 IL-8を産生しており、これらのサイトカインにより母床の破骨細胞を活性化し、骨吸収を促進していると思われた。しかしながら、我々のosteolysisを呈する部位の組織中のmacrophage系細胞はNSE陽性、TRAP陽性のmacrophage polykaryonであり、この組織自身が分化し、骨吸収を直接行うことは困難と思われた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 黒木 良克: "人工股関節置換術後に生じる骨透亮像の検索" 日本整形外科学会雑誌. 69. 927-937 (1995)
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[Publications] 平川 誠: "人工股関節置換術後に生じるlooseningの発生機序について" Connective Tissue. 26. 319-325 (1995)
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[Publications] 今里 有紀彦: "人工股関節置換術後の周囲組織における骨吸収能に関する検討" 人工関節研究会誌. 25. 109 (1995)
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[Publications] 黒木 良克: "人工股関節術後の弛みの原因と再置換術について" リウマチ. 33. 341-351 (1993)
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[Publications] 今里 有紀彦: "セメント使用型人工股関節置換術後に生じるlooseningの発生機序に関する研究-X線所見と生化学的ならびに免疫組織化学的所見を対比して-" 人工関節研究会誌. 24. 78 (1994)
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[Publications] 林 淳慈: "セメントレス人工骨頭置換術後に生じるlooseningの発生機序に関する研究-X線所見と生化学的ならびに免疫組織化学的所見を対比して-" 人工関節研究会誌. 24. 78-79 (1994)