Research Abstract |
頚椎椎間孔や神経根の解剖学的特徴や両者の相互関係が頚椎症性神経根症にどのように関与しているかを明らかにすることを目的とした.骨標本146体の第3頚椎より第7頚椎を対象とし,骨性椎間孔の形態の指標となる部位(上関節突起と椎体の位置関係,上関節突起と鈎状突起間の幅,上椎切痕の深さ)と椎体横径,前後径および椎孔横径,前後径を計測した.また,屍体標本30体より得た頸部を前方から筋,椎体,硬膜,軟膜を除去し,C4からC8神経根前根系の脊髄起始部を明らかにし前根糸の脊髄起始部の形態計測を行なった.結果として,上関節突起と椎体の位置関係は,C4の上関節突起が最も前方に位置しており以下C5,C6,C3,C7の順序で有意差を認めた.上関節突起と鈎状突起間の幅もC4が最も狭く以下C5,C6,C3,C7の順序で有意差を認めた.上椎切痕の深さには高位別有意差は認められなかった.尚,上関節突起と椎体の位置関係および上関節突起と鈎状突起間の幅と,椎体および椎孔の大きさの間には相関は認められなかった.C5,C6神経根前根糸は他に比べて縦幅,横幅共に有意に広く脊髄より起始していた.くわえ,C8神経根前根糸は他に比べて縦幅,横幅共に有意に狭く脊髄より起始していた.以上の結果より,頸部の骨性椎間孔においてその横幅が最も狭く全長が長い骨性椎間孔はC3/C4間の椎間孔であり,以下C4/C5,C5/C6,C2/C3,C6/C7の順位であり神経根に圧迫を与え易い椎間孔も同順位と考えられ,C5,C6神経根前根糸の脊髄起始部での圧迫の機会は他の部位に比べて多くなると考えられる.今回の観察の結果と臨床的に頚椎症性神経根症の責任病変が頚髄神経根の第4,第5,第6神経根に多い事実から頸椎の解剖学的形態が頚椎症性神経根症発症に関与することが示唆された.
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