Research Abstract |
Wister系雄性ラットを用い,断頭犠殺後,直ちに心臓を摘出し,0℃の生理的食塩水で洗浄したのち,心室筋を分離した.その心室筋よりWilliamsとLefkowitzらの方法に準じてβ受容体心筋膜画分を作製した.蛋白濃度の測定はLowry法により行った.Abeらの方法に従い,ATPを含む溶液の終濃度がそれぞれ0,0.4,0.8,1.2,1.6,2.0mMとなるようにセボフルレンを添加して調整したβ受容体心筋膜画分を加え,1-イソプロテレノール,guanosine 5″-O-(3-thiotriphosphate),フォルスコリンを用いてβAR, Gs, ACをそれぞれ刺激し,1分間に産生されるcAMP量を測定してcAMP産生速度を求めた.すべての実験の反応は,セボフルレン濃度を一定に保つよう,密封した試験管の中で行った.上清中のcyclicAMP濃度は反応液を遠心分離後,エンザイムノアッセイ法で測定した.上記実験中のセボフルレン濃度は,β受容体心筋膜画分に添加する前にガスクロマトグラフィーで測定した.統計学的検定は分散分析とStudent-t検定で行い,P<0.05を有意と判定した. cAMP産生速度は,AC刺激時には0-2.0mMセボフルレンの影響を受けなかった.2.0mMのセボフルレン存在下で,βAR刺激時には対照値に対して,87.1±4.8%に,Gs刺激時には79.4±7.0%にそれぞれ抑制された。平成5,6年度で報告した受容体結合実験では,0-2.0mMのセボフルレン存在下でK_dとK_iは濃度依存性に増加したが,B_<max>は変化しなかった.また,Munsonらの式を用いて解析した全受容体に対する高親和性状態の受容体の割合は,2.0mMのセボフルレン存在下には対照値の0.60±0.15から0.35±0.12に低下した。これらの結果から,セボフルレンはリガンド-受容体の結合を抑制し,受容体と促進性GTP結合蛋白の関係を阻害することでアドレナリンβ受容体の情報伝達を抑制することが示唆された.
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