Research Abstract |
感染結石内細菌をpolymerase chain reaction(PCR)法で同定するため,まずProteus mirabilisを同定する実験系を確立した.P.mirabilisは感染結石から最も高頻度で検出され因果関係が明かな上,当教室における過去の結石培養のデータも蓄積されている.まずDNAのデータベース(GenBank)より,P.mirabilisのurease operon内のureC遺伝子に特異的なoligonucleotide primers(増幅DNA断片は533bp)を設計し,PCRは30サイクル増幅とした.次に11種類の試験菌株(P.mirabilis 23株,P.vulgaris,P.rettgeri,M.morganii,K.pneumoniae,E.cloacae,S.marcescens,E.coli,P.aeruginosa,S.aureus,S.epidermidis 各3株)を用いて本primersの特異性を確認した.次に87例の尿路結石標本(struvite±carbonate apatite 49例,calcium oxalate±calcium phosphate 29例,尿酸6例,シスチン3例)を用いて,本法により結石内P.mirabilisを調査した.結石10mgを粉砕,蒸留水に懸濁し95℃,10分間加熱後,その上清を試料とした.49例のstruvite結石のうち24例に結石培養が施行されており,10例がP.mirabilis検出,6例が他のウレアーゼ産生菌検出,8例がウレアーゼ陰性菌検出または培養陰性であった.全87例中PCR法にて,struvite結石の17例にのみP.mirabilisが検出された.結石培養でP.mirabilis陽性であった10例はすべてPCR法でも陽性であったが,結石培養でA.anitratusが検出された1例と培養陰性であった1例でもPCR法でP.mirabilisが検出された.これらの2例とも尿培養でP.mirabilisが検出されていたことから,結石培養で検出し得なかったP.mirabilisをPCR法では検出し得たものと考えられた.なお結石培養を施行されなかったstruvite結石25例中5例がPCR法にてP.mirabilis陽性であった.本法は手技的にも極めて簡便であり,過去10年間以内の結石標本ならばまず問題なくPCR法により解析可能である上,汚染による偽陽性の危険も予想以上に少なかった.今後はUreaplasma urealyticum,Corynebacterium等,通常の結石培養では検出されにくい菌種を本法により解析するとともに,実際に体外衝撃波結石破砕術を行う尿路結石症例について本法の有用性を検討する予定である.以上の研究結果は現在投稿準備中である.なお今回,パルスフィールド電気泳動装置を用いた実験は,設備備品の問題上施行できなかった.
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