1993 Fiscal Year Annual Research Report
アンドロゲン依存性組織退縮に伴う初期発現遺伝子群の分子内分泌学的研究
Project/Area Number |
05671317
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
伊澤 正郎 鳥取大学, 医学部, 助教授 (50032222)
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Keywords | アンドロゲン / アンドロゲン依存性組織 / 組織退縮 / アポトーシス / 初期発現遺伝子群 / DNAフラグメンテーション / がん遺伝子 / Max |
Research Abstract |
アンドロゲン依存性組織の恒常性の分子機構を解明するためには、細胞増殖の分子機構と同時にアポトーシスの分子機構を明らかにする必要がある。アポトーシスは生物界を通して幅広く保存されている自爆死機構であり、種々のアポトーシス誘導因子を用いた最近の研究は、このプロセスに複数の経路の存在を示唆している(Story et al.Int J Radiat Biol 61,243,1992,Carson et al.PNAS 89,1970,1992,Bellomo et al.Cacer Res 52,1342,1992,Evan et al.Cell 69,119,1992,Watanabe et al.Nature 356,314,1992,Hengartner et al.Nature 356,494,1992).さらに、アポトーシスを制御するがん遺伝子bcl-2が同定されたことは(Tsujimoto et al.Science 226,1097,1984)、この細胞死の生理的役割の重要性を暗示している。このようなアポトーシスをめぐる爆発的な研究の展開は、私共に、アンドロゲン依存性組織退縮の分子機構を探る研究の重要性を改めて示した。 平成5年度の研究で、究極の目的であるアンドロゲン依存性組織の恒常性の分子機構の解明へ向けて、アンドロゲン依存性組織(ラット前立腺と精襄)退縮の分子機構解明の糸口を遺伝子発現のレベルで得る事を目標に、退縮初期段階における初期発現遺伝子群の概容を知ることを主目的に以下の2点に焦点を絞り研究してきた。 (1)アンドロゲン依存性組織の退縮初期段階におけるがん遺伝子群発現の詳細な検討の1つの試みとして多様な生理作用との関連が示唆されているMycファミリーのパートナーであるラットMax cDNAのクローニングを試み、分離に成功した。そして、Max mRNAの去勢によるすみやかな誘導を観察した。これらの結果から、Maxをはじめとするがん遺伝子群発現の詳細と退縮過程との関連の検討が新たな研究課題となった。これらの研究は現在進行中であり、ラットMax cDNAに関する結果は既に報告した(伊沢正郎、第66回日本内分泌学会1993、Izawa,M.,1993,Biochem Biophys Acta 1216,492-494,1993)。 (2)アポトーシスの指標として用いられて来たGenomic DNAのフラグメンテーションは、もっぱらエチヂウムブロマイド染色により観察されて来たが、アポトーシスの詳細なプロセスを検討するための指標とするには、DNAフラグメンテーションの分子機構の解明とともに、そのより感度の高いAssay法が必要であった。この目的のために、Genomic DNAをプローブとするHybridization Assayを考案した。この研究の過程でDNAフラグメントの性状の検討が新たな研究課題となった。このAssay法を用いて特定される退縮初期段階にある組織、細胞における発現変動を示す遺伝子群の検討は次年度の課題として残された。 これらの研究は、発展的に現在進行中であり、次年度の研究課題として継続する予定である。
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[Publications] Masao Izawa: "Molecular Cloning of Androgen-Regulated Messenger RNA In Rat Seminal Vesicle" Miniposters:The Uth International Congress of Andrology. 37 (1993)
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[Publications] Masao Izawa: "Molecular Cloning and Sequencing of Rat Max cDNA:Castration-induced expression of the 2kb transcript in male accessory sex organs of rats" Biochimica et Biophysica Acta. 1216. 492-494 (1993)