1994 Fiscal Year Annual Research Report
尿路悪性腫瘍におけるシスプラチン耐性誘導物質の同定と耐性克服薬剤の検索
Project/Area Number |
05671326
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Research Institution | OITA MEDICAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中川 昌之 大分医科大学, 医学部, 講師 (90164144)
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Keywords | CDDP耐性 / 前立腺癌 / 細胞内CDDP蓄積量 / DNA修復能 |
Research Abstract |
進行性前立腺癌およびホルモン抵抗性前立腺癌の化学療法にはシスプラチン(CDDP)がよく用いられる。しかし、CDDPの繰り返し投与により耐性細胞の出現がおこるようになり、これが治療効果を減弱させる原因となる。われわれはCDDP耐性の機序を検討するためにヒト前立腺癌株PC-3よりCDDP耐性株P/CDP4及びP/CDP5を分離した。そして以下の結果を得た。(1)P/CDP4及びP/CDP5はそれぞれ11倍、23倍のCDDP耐性を示し、カルボプラチン、マイトマイシンC、エトポシド、紫外線照射にも2-14倍の交差耐性を示した。(2)ノーザンブロット法では多剤耐性遺伝子mdr1の過剰発現はみられなかった。(3)CDDPは構造中に白金を含むことからその耐性獲得には解毒酵素の関与が示唆された。そこでPC-3とP/CDP5での細胞内グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)活性を比較したが有意差はみられなかった。しかしながら細胞内グルタチオン量がP/CDP5でPC-3の3.8倍高く、グルタチオンによるCDDP抱合解毒の機構の関与も否定できなかった。(4)アルカリ溶出法によりCDDPとDNA間の架橋形成量を比較するとP/CDP5ではPC-3よりも架橋形成量が有意に低下していることが観察された。さらに耐性株が紫外線照射に対しても交差耐性を示すことからも、CDDP耐性機序にはDNA修復能の亢進が関与していることが示唆された。(5)原子吸光光度計によりPC-3とP/CDP4及びP/CDP5での細胞内CDDP蓄積量を調べた結果、P/CDP4及びP/CDP5での蓄積量はそれぞれ、PC-3の蓄積量の18-34%、9-18%に減少しており、細胞膜でのCDDP取り込み抑制あるいは、排出促進機構の存在が示唆された。(6)親株、耐性株間で免疫組織化学的にケラチン、ビメンチン、アクチン等の細胞内骨格蛋白の発現を調べたが、いずれもその発現量に有意差はみられなかった。 以上より、前立腺癌株PC-3由来のCDDP耐性株の耐性獲得機序には細胞内CDDP蓄積量の減少やDNA修復能の亢進、グルタチオンによるCDDP抱合解毒の機構の関与などの複数の因子が関与していると考えられた。
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[Publications] Masayuki Nakagawa et al: "Reduction of drug accumulation in cisplatin-resistant variants of human prostatic cancer PC-3 cell line" Journal of Urology. 150. 1970-1973 (1993)
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[Publications] Fujii,R.et al: "Active efflux system for cisplatin in cisplatin-resistant human KB cells" Jpn.J.Cancer Res.85. 426-433 (1994)