1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05671336
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
石田 克美 帝京大学, 医学部, 講師 (90101691)
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Keywords | 精子 / 運動能 / フリーカルシウムイオン / 不妊症 / フラ2-AM / 運動活性化 |
Research Abstract |
精子運動能がカルシウムイオンによって活性化をうける典型的な例として知られるハムスターの精巣上体尾部より得られる成熟精子をカルシウムフリー中で運動させた場合は鞭毛の振動数、前進速度共に低く、一方、精子外カルシウムイオン濃度を十分に高くした場合(1mM程度)は振動数も前進速度も高くなるので、それぞれ運動能不良群と運動能活性化群のモデルとして使用した。運動能はカルシウムバッファーを用いて検討した結果、0.75マイクロモル以上のフリーカルシウムイオンが精子外に存在すれば運動は活性化されることが判明した。細胞内フリーカルシウムイオン濃度の測定はフラ2-AM(acetoxymethylester)を精子に負荷し、フリーカルシウムイオン濃度に依存した蛍光強度を顕微分光解析できるアルガス50を用いることで解析して行った。フラ2-AMは非動化した精巣上体液に添加してこれを室温で1時間精子とインキューベートして負荷した。負荷後、精子をフリーカルシウムイオン濃度を変化させた液に懸濁してその時の細胞内フリーカルシウムイオン濃度とその分布を測定したところ、精子外フリーカルシウムイオンが全くない場合、精子内では極めて低いフリーカルシウムイオンの遊離が起こり、それはミトコンドリア部分にのみ認められた。これに反し、精子外に豊富にフリーカルシウムイオンが存在した場合(1mM)、精子先体部にまず高濃度のフリーカルシウムイオンの蓄積が認められ、次いで核を中心とした精子頭部に高いフリーカルシウムイオンの蓄積が生じる。しかしながら、先体部と頭部のフリーカルシウムイオンの高濃度の蓄積は一過性であって、最終的には鞭毛基部の中心体近傍に極めて高いフリーカルシウムイオンの蓄積が生じ、これは長期に渡って維持された。従って、運動能不良精子では、精子外カルシウムの精子内浸入経路になんらかの機能不全があることが示唆された。
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