Research Abstract |
1.ラット胚培養 Wister系雌ラット,妊娠9日目,head-fold stageのconceptusを75%ラット血清を培養液として用い,糖尿病環境のモデルとして異なる濃度のぶどう糖を添加し,48時間回転培養を行った。培養液のぶどう糖濃度は150mg/d1を正常対照群とし,300,600,900,1200mg/d1を高血糖群とした。その結果,胎仔発育の指標としての頭臀長と体節数はぶどう糖濃度600mg/d1以上で対照群に比し有意に抑制され,奇形発生率も中枢神経系の異常(大奇形)と中枢神経系以外の異常(小奇形),ともにぶどう糖濃度600mg/d1以上で有意に増加した。そこで糖尿病環境,特に高血糖の胎仔発育抑制ならびに奇形発生への関与が示された。 2.免疫組織化学染色 ラット胚培養系に良好な再現性が得られたので,この系を用いて糖尿病合併妊娠における先天奇形発生機序の解明を試みた。糖尿病胎仔に特徴的な奇形の1つに神経管異常があることから,初期発生において形態形成制御因子として組織の発生,分化過程を司どる細胞接着分子群,なかでもカドヘリン分子群発現の高血糖による修飾と奇形発生との因果関係に着目した。神経系の分化にはN型カドヘリンの関与が示唆されているため,ぶどう糖濃度150mg/d1ならびに1200mg/d1で培養して得られた胎仔について,N型カドヘリンの発現動態を免疫組織化学染色法を用いての検討を試みた。まず,胎仔を4%パラホルムアルデヒドで固定し,しょ糖リン酸緩衝液食塩水で洗滌し,5mumの胎仔矢状断,横断凍結切片を作成した。切片上には前脳,中脳,後脳,視束,眼胚,神経管が同定された。しかし,入手可能なN型カドヘリンモノクローナル抗体は,ラットでは非特異的反応を生じるため,実験動物をマウスに変更し,培養を試みたが,再現性のある実験系が得られていない。そこで他施設にラットN型カドヘリンに特異的なペプチドの合成を依頼し,ポリクローナル抗体の作製を試みている。現在ペプチド合成が終了し,ウサギへの感作が進行中である。
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