1994 Fiscal Year Annual Research Report
ひと聴器の病理組織学的研究(内耳の死後変化、自己融解に関する研究)
Project/Area Number |
05671422
|
Research Institution | 山梨医科大学 |
Principal Investigator |
村上 嘉彦 山梨医科大学, 医学部, 教授 (10166267)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 俊一 山梨医科大学, 医学部, 助手 (20232613)
橋本 かおり 山梨医科大学, 医学部, 助手 (50242657)
野沢 出 山梨医科大学, 医学部, 講師 (40172788)
|
Keywords | ヒト側頭骨病理組織学 / 脳死や呼吸不全の内耳組織に及ぼす影響 / 内耳膜迷路の組織保存と死因との関連 / 内耳組織の死後変化と自己融解 |
Research Abstract |
平成5年以来上記課題のもとに継続的に行われた研究成果の概要は下記のごとくである。 1.脳死状態に陥り、長期の人工呼吸器装着の後に身体死に至ったことが臨床的にもまた剖検時にも確認された個体の側頭骨における内耳膜迷路や神経系を組織学的に検索した結果では、身体死後短時間内に採取固定された標本においては、これら内耳感覚上皮や神経系は組織学的に良好に保たれており、脳死の個体でしばしば観察される脳実質の液状化壊死のような身体死以前に現れる高度の自己融解は、内耳組織では現れないとする考え方が妥当と思われる。 2.脳死のような中枢性呼吸不全を示す個体とは別に、長期にわたる高度の末梢性呼吸不全が前提となり死に至る筋萎縮性側索硬化症や重症の拘束性呼吸疾患などの個体の側頭骨における内耳感覚上皮や神経系を組織学的に検索した結果においても、これら内耳組織は死後短時間のうちに採取固定さた標本を観察する限りでは、その保存状態はかなり良好であることもほぼ明らかとなっている。すわなち長期の低酸素・高二酸化炭素血症の状態が内耳組織に及ぼす影響は、予想に反してさほど高度には現れ難いとこが示唆される。 3.ただしこれらの脳死状態や高度の末梢性呼吸不全状態の後に身体死に至った個体では、内耳感覚上皮や神経系の死後変化によるとみられる自己融解所見は、死後同様の時間経過後に採取固定された他因死の個体の標本と比較すると、明らかに高度に現れやすい傾向が認められている。このことはヒト内耳に現れる死後変化としての自己融解は、標本の採取固定までの時間経過や温度条件のほかに、各個体の臨死状態や死因、つまりは死に至る過程によってもその組織保存にかなり大きな影響を及ぼしている可能性が示唆される。さらに標本の検索を継続して明年度には一定の結論をえたいと考えている。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 村上嘉彦 他5名: "脳死状態におけるヒト内耳膜迷路の組織学的所見と死後変化" Otology Japan. 4. 520 (1994)
-
[Publications] 野沢出他5名: "加齢によるモルモットの聴性誘発反応域値の検討(第3報)" Otology Japan. 4. 677-682 (1994)
-
[Publications] 村上嘉彦(共著): "難聴[今日の神経疾患治療指針(亀山正邦・高倉公朋編)]" 医学書院, 988 (1994)