1994 Fiscal Year Annual Research Report
中耳真珠腫による中耳粘膜および内耳感覚器障害の解明
Project/Area Number |
05671438
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
大橋 淑宏 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (60160602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂下 哲史 大阪市立大学, 医学部, 助手 (20205743)
枡谷 治彦 大阪市立大学, 医学部, 講師 (10190357)
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Keywords | 中耳真珠腫 / 細胞培養 / 線毛活性 / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
真珠腫性中耳炎の根本手術時に採取した標本より真珠腫細胞を分離培養する方法を確立した。この真珠腫細胞を継代培養し、この間に培養液中に産生放出される因子や物質が中耳・耳管粘膜に及ぼす影響を研究した。すなわち、真珠腫を培養した後の培養液上清を採取し、この上清を含有する培養液中に含有される因子あるいは物質に生理学的作用を解明することを試みた。また、対照として、ヒト表皮細胞を継代培養し、この際に得られた培養上清に含有する因子の生理学的作用をも検討した。まず、これら培養上清の線毛機能に及ぼす影響を観察した。モルモット中耳粘膜をヒト表皮細胞培養後の培養上清を含有する培養液中で培養した場合には、線毛活性の低下は軽度にとどまっていた。一方、真珠腫細胞の培養上清を含有する培養液中でモルモット中耳粘膜を培養した場合には、線毛活性の低下はより顕著であった。したがって、この実験より、中耳真珠腫は増殖過程で線毛活性を阻害する因子を産生していることが判明した。 次に、これらの培養上清を含有する培養液をモルモットの鼓室腔内に経鼓膜的に注入し、これによって惹起される中耳・耳管粘膜に病態を観察した。ヒト表皮細胞培養上清を注入した場合と比較すると、真珠腫細胞培養上清注入後には中耳・耳管粘膜の線毛活性は有意に低下していた。また、中耳・耳管クリアランス時間も真珠腫細胞培養上清を注入した群では、有意差をもって高度に延長していた。また、電子顕微鏡による観察より、真珠腫細胞培養上清を注入した群の中耳粘膜には、1)好中球を初めとする各種炎症細胞の浸潤、2)血管透過性の亢進、3)線毛細胞の病気変化、4)線毛の形態学的変化、5)杯細胞の増加、などの変化が観察された。 以上の研究結果より、真珠腫細胞は線毛活性抑制因子および起炎症因子をその増殖過程で産生しており、これらの因子が真珠腫性中耳炎の病態や治療を複雑化している可能性が考えられた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Ohashi Y: "Influenza A modification of endotoxin-induced otitis medid with effusion in the guineapig." Eur Arch Otorhinolaryngol.250. 27-32 (1993)
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[Publications] Ohashi Y: "Cholosteatoma and mastoisl surgery" Kugler Publications, 4 (1992)
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[Publications] Ohashi Y: "Recent advances in otitis media" D.C.Pecker, 4 (1993)