1993 Fiscal Year Annual Research Report
肝冷却保存に対する嫌気的エネルギー基質投与の保存効果への影響に関する研究
Project/Area Number |
05671491
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鎌田 振吉 大阪大学, 医学部, 助手 (40161202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 雄一 大阪大学, 医学部, 助手 (30218896)
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Keywords | 肝保存 / 果糖 / adenine nucleotides / purine compounds / adenylate energy charge |
Research Abstract |
実験動物として雄性Wistar rat24匹を用い、実験前自由摂食とした6匹と実験前24時間絶食とした18匹に分けた。24時間絶食の18匹に対して、ネンブタール麻酔下に開腹手術を行い、門脈にカニュレーション後、臓器潅流装置を用いて肝の潅流を行った。潅流液を冷却しながら肝を摘出し、ブドウ糖(20mM)、果糖(20mM)、およびこれらを含まない保存液を用いて4℃単純冷却浸漬保存を6時間行った(Fast glc群、Fast Frc群、Fast群)。自由摂食の6匹に対しては、保存液中に糖類を添加せずに上記と同様に保存を行った(Fed群)。 結果:H-E染色下の組織学的検討では各群に明かな差を認めなかった。Fast群、Fast Glc群、Fast Frc群、Fed群で保存前のグリコーゲン量はそれぞれ0.08±0.01、0.05±0.02、0.09±0.01、1.7±0.29(μmol/mgprot)、保存液の乳酸量はそれぞれ13±1、15±2、129±12、61±8(μmol/mgprot)であった。adenine nucleotidesについては、Fast群、Fast Glc群、Fast Frc群、Fed群でATPがそれぞれ1.5±0.7、1.3±0.5、1.5±0.3、2.2±0.7(μmol/mgprot)、ADPがそれぞれ2.9±0.3、2.7±0.2、4.3±0.6、5.2±0.9(μmol/mgprot)、AMPがそれぞれ18.4±0.9、16.4±1.2、13.3±0.7、13.0±0.8(μmol/mgprot)とATPに有意差は認めなかったが、Fast Frc群およびFed群において、ADPは他に比べて高値で、AMPは他に比べて低値であった。この結果、adenylate energy chargeはそれぞれ0.12±0.02、0.13±0.03、0.19±0.02、0.23±0.04とFast Frc群およびFed群において、Fast群およびFast Glc群に比べて高値を示した。purine compoundsについては、inosine、adenoseine、hypoxanthineでは各群に有意差を認めなかったが、xanthineではFast群、Fast glc群、Fast Frc群、Fed群それぞれの値は1.0±0.5、1.0±0.4、0.2±0.1、0.4±0.2(μmol/mgprot)とFast Frc群およびFed群において、Fast群およびFast Glc群に比べて低値を示した。以上の結果より自由摂食によってあらかじめ肝のグリコーゲン量が増加している場合は、従来からの報告にあるように、嫌気的解糖による乳酸の生成の際に発生するエネルギーによってadenine nucleotidesの分解が抑制(すなわちadenylate energy chargeが保持)され、分解により生じるxanthineの生成が抑制されることが確かめられた。保存液に果糖を添加した場合は、ブドウ糖を添加した場合と異なり、乳酸が産生されると同時にadenine nucleotidesの分解とxanthineの生成が抑制されることが明らかとなった。すなわち冷却保存中の肝に対するエネルギー基質として、果糖を初期注入により投与することで、その保存効果を高め得ることが示唆された。
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