1994 Fiscal Year Annual Research Report
小腸移植における冷保存および虚血再灌流傷害に関する電子顕微鏡学的研究
Project/Area Number |
05671497
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
有馬 透 九州大学, 医学部, 助教授 (90159509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水田 祥代 九州大学, 医学部, 教授 (30038856)
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Keywords | 小腸移植 / 腸陰窩細胞 / 臓器保存 / 再灌流 / 組織傷害 / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
小腸移植において小腸組織が冷保存・再灌流によって受ける傷害から回復するか否かは陰窩細胞のviabilityにかかっている。保存液や冷保存時間の違い、再灌流の有無によるこの陰窩細胞の状態の差異、ならびに回復後絨毛上皮細胞の形態・機能を電顕的に把握し、病態解明に寄与することが本研究の目的である。今年度は冷保存時間の違いおよび再灌流の有無による陰窩細胞の傷害の差異についてより詳細な検討を行った。 体重250〜350gの雄性Lcwisラットの近位側空腸25cmをグラフトして採取し、4℃のUW液にて単純浸漬保存を行った。次いで24時間または48時間後にThiry-Vclla loopを作成する同系移植を行った。グラフト採取時(対照)、冷保存終了時、移植再灌流開始30分後に組織の一部を採取し、型通り電顕用試料を作成し検鏡した。 冷保存終了時の陰窩下部を比較すると、24時間後、48時間後とも陰窩上部と異なり細胞配列は保たれていたが、48時間後では細胞核のヘテロクロマチンが増量し、ミトコンドリア顆粒の増大が認められた。再灌流を開始すると、24時間冷保存群では陰窩下部に核胞体比が大きく細胞小器官の比較的乏しい幼若な細胞の集積がみられたのに対し、48時間冷保存群では陰窩下部においても上部同様細胞変性、配列の破綻が顕著であった。 細胞形態学的には48時間冷保存終了時に陰窩細胞でみられた核のヘテロクロマチンの増量はクロマチンの不活性化の表れであり、ミトコンドリア顆粒の増大は虚血の結果である可能性がある。48時間冷保存群は再灌流後に陰窩下部の顕著な変性・破綻をきたしており、これらの所見は冷保存終了の時点で再灌流後の回復不能を示唆するものであると考えられた。
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