1994 Fiscal Year Annual Research Report
13CNMRによる真菌代謝の研究(形態形成機序解析への応用)
Project/Area Number |
05671503
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中山 宏明 九州大学, 歯学部, 教授 (70047744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下川 修 九州大学, 歯学部, 講師 (40136502)
河野 敬一 北海道大学, 理学部, 助教授 (10136492)
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Keywords | カンジダ・アルビカンス / 形態転換 / 13CNMR / グルコース代謝 / 酢酸代謝 |
Research Abstract |
カンジダ・アルビカンスの示す酵母型から菌糸型細胞への形態転換は、病原因子の一つと考えられてきた。私達はこの転換現象の解明のために両形態の細胞における代謝を、核磁気共鳴法を使って解析した。両形態の細胞の比較の際、培養および測定条件を同一にして解析を容易にするために、変異株を用いた実験系を考案した。そして13Cで標識したグルコースと酢酸の代謝を調べたところ、次のような結果を得た。グルコースの代謝:酵母型細胞(野生株)では、グルコースの消費とともにトレハロースやアラビトールなどのポリオール、あるいはエタノールの蓄積がみられた。これに対して、菌糸型細胞(変異株)では、グルコースが消費されてもアラビトールの蓄積が殆ど検出されなかった。変異株から分離した酵母型細胞で増殖する復帰株は、野生株同様アラビトールを蓄積した。酢酸の代謝:酢酸はアセチルCoAを経て、直ちにTCA回路に入る。オキザロ酢酸から回路外へ出る経路があり、解糖系を逆行して糖新生系に流れる。[2-13C]酢酸を代謝させたところ、酵母型細胞ではアラビトールの顕著な蓄積がみられたのに対して、菌糸型細胞ではアラビトールの蓄積が激減し、これに付随してクエン酸、リンゴ酸、アスパラギン酸の蓄積がみられた。復帰株は野生株同様の代謝を示した。糖新生系で産生されるトレハロースが両形態の細胞で同様に検出されることから、変異株でのアラビトールの激減はヘキソース・リン酸(HMP)シャントの活性低下を示唆する。 以上のように、両形態の細胞での代謝上の相違を明らかにすることができた。アカパンカビでは細胞内NADPHの低下が集落形状に影響すると報告されている。カンジダ・アルビカンスでも、HMPシャントの活性低下によるNADPHの低下が細胞形態の変化に関連があるかもしれない。
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