1995 Fiscal Year Annual Research Report
歯の発生における石灰化機構に関する系統発生学的研究 -その1.軟骨魚類の歯の初期石灰化-
Project/Area Number |
05671522
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
笹川 一郎 日本歯科大学, 新潟歯学部, 助教授 (00095134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤井 純治 新潟大学, 理学部, 助教授 (30101059)
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Keywords | 歯 / 石灰化 / エナメロイド / 象牙質 / 板鰓類 |
Research Abstract |
平成7年度の実施計画にもとづいて行った研究の主な成果はつぎのとおりである。 1、ネコザメのエナメロイド基質形成期後期はエナメロイド有機基質中にはすでに微細な針状の結晶が多数出現する。これらからはアパタイトを示す制限視野回折像が得られる。この結晶は単位膜に囲まれ、チューブ状小胞の中に存在するように見える。周囲のチューブ状小胞中には高電子密度の微粒子が多数認められ、これらは脱灰すると見られなくなるから、結晶の前駆物質の可能性が考えられる。 2、ヒラタエイのエナメロイド石灰化期のエナメロイド結晶の高分解能電顕観察では明瞭なアパタイトの格子像が認められる。縦断像では先端がいくつかの針状に突出して見えることがあり、横断像では数個の結晶が癒合している様に見えることがある。また、結晶周囲には有機質と思われる層が見られることがある。 3、ネコザメ、ヒラタエイのエナメロイド石灰化期から成熟期の歯胚上皮細胞の微細構造を観察した。内エナメル上皮細胞の遠心側には糸粒体、小胞、空胞、高電子密度顆粒が多く、また近心側にはゴルジ装置と糸粒体が発達し、側壁は膜のかみ合いが顕著である。ネコザメでは多くの毛細血管が歯胚に接し、外エナメル上皮細胞の近心側は広く細胞間隙があく。これらは歯胚上皮細胞がこの時期のエナメロイド有機基質の分解と脱却におおきく関与していることを示唆している。 4、光顕と電顕で酵素組織化学を試みた結果、ALKPaseはエナメロイド石灰化期から成熟期の内エナメル上皮細胞の細胞壁に強い活性が認められ、ここでの活発な物質輸送が示唆される。Ca^<2+>-ATPaseもALKPaseと同様な場所に活性が見られ、内エナメル上皮細胞はエナメロイドへのCa輸送にも積極的に関与すると思われる。ACPaseの活性は、ネコザメの外エナメル上皮細胞には強くでるが、トラザメやヒラタエイではほとんど見られず、種差があった。
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