1993 Fiscal Year Annual Research Report
実験的筋疲労が下顎挙上筋のmotor timeに及ぼす影響について
Project/Area Number |
05671648
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
更谷 啓治 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (60170817)
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Keywords | 筋疲労 / 筋電図 / motor time / 咬筋 |
Research Abstract |
反応時間(reaction time:RT)は「与えられた刺激によって意識的に決定される応答の最小の時間遅れ」であり,多くの反応時間分析によって精神運動機能の研究が行われている。RTは刺激から筋活動開始までの潜時(premotor time:PMT,EMG-RT)と筋活動開始から実際の運動開始までの潜時(motor time:MT)に分けられる。心構えや熱意のような心理状態によって影響を受けるのはPMTであることから,PMTは主に運動発現の中枢過程を,MTは末梢過程を反映すると仮定され,四肢筋の筋疲労時においてRTが延長するのはMTの延長によるものであるとの報告が行われている。そこで本研究では,咀嚼筋,特に咬筋の筋疲労を定量化する指標とすべく,実験的筋疲労が咬筋のMTに及ぼす影響について検討を行った。ところで,筋疲労に伴う代謝性変化は,筋電位の周波数を減少させ,パワースペクトルの低域へのシフトが起こるといわれている。そこで,50%MVCの咬みしめ強度で実験的筋疲労を与えた場合,平均周波数(MPF)は疲労前と比較して20%近く低下した。累積周波数値(CP)は,MPFと同様な低下傾向を示し,CP10%,25%,50%および75%ともに20%前後の低下を示した。したがって,今回与えた負荷により疲労状態にあることが確認された。一方MTは,被験者間でのばらつきが大きかった。一般にスポーツのような身体運動を行っている個人は,そうでない個人よりMTが短いといわれており,本研究の結果は咬筋の発達の差を反映しているものと考える。また疲労後のMTは延長傾向は示すものの,その程度は小さく有意なものではなかった。今後,実験条件の追加を行い,被験者数を増やすことによって,実験的疲労が咬筋MTに及ぼす影響について更なる検討を行う所存である。
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