Research Abstract |
1)各種抗生物質のヒト好中球の活性酸素産生能に対する影響に関する研究では,本年度まで12種類の抗生物質(略号;NTL,ISP,TOB,FLRX,CPR,FMOX,AZT,ASPC,MINO,CAZ,RXM,FOM)を用いて検討した.ヒト好中球のスーパーオキシド(O^・_2^-)産生能の測定はCLA依存性化学発光法を用いて行った.その結果,NTL,ISP,TOB,FLRX,ASPC,MINOにオプソニン化ザイモザン(OZ)およびPMA刺激による好中球O^・_2^-産生能の増強効果が認められ,またCPRはPMA刺激による好中球O^・_2^-産生能を,FMOXはOZ刺激による好中球O^・_2^-産生能をそれぞれ増強した.CAZ,AZT,FOMではこの増強効果は認められず,更にはRXMでは逆に抑制作用を示した. 2)In vitroにおける活性酸素生成系に対する影響に関する研究では,本年度まで6種類の抗生物質(NTL,ISP,TOB,FLRX,CPR,FMOX)を用いて検討した.HX-XOD反応系によるO^・_2^-生成の測定はCLA依存性化学発光法を,Fenton反応によるヒドロキシルラジカル(・OH)生成の測定はESRスピントラップ法をそれぞれ用いて行った.その結果,Fenton反応系に対する影響は6種類の抗生物質とも認められなかったが,HX-XOD反応系によるO^・_2^-生成系では,FLRX,FMOXにO^・_2^-生成の増強効果が認められた. 1),2)の結果より,各種抗生物質の生体防御能に対する効果並びに作用機序はそれぞれ異なることが示唆され,この点も含めて,今後更に数種類の抗生物質について検討を行う必要があると考えられた. 口腔癌患者,顎口腔領域の感染症患者の好中球のO^・_2^-産生能についての研究では,慢性下顎骨骨髄炎患者11名中8名,放射線性下顎骨骨髄炎患者11名中10名に好中球のO^・_2^-産生能の低下が認められ,また口腔癌患者21名中16名に同様に好中球のO^・_2^-産生能の低下が認められた.これらの患者の免疫能(IAP,TB-cell等)を測定し,細胞性免疫能の低下が認められたことから好中球の活性酸素産生能の測定は,生体防御機能の把握に有用であることが示唆された.
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