1993 Fiscal Year Annual Research Report
両側頸部郭清手術時の脳静脈還流障害による脳浮腫発現に関する実験的研究
Project/Area Number |
05671698
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
小谷 順一郎 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (40109327)
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Keywords | 頸部郭清手術 / 脳静脈還流障害 / 脳浮腫 / 頭蓋内圧 |
Research Abstract |
頸部郭清術は、脳静脈血の主還流路である内頸静脈やリンパ節を切除するため、脳静脈還流障害に起因する頭蓋内環境の変化を来す可能性がある。本研究では、両側頸部郭清をラットに施行し、術後の脳浮腫および脳組織障害の発生について検討を加えた。 【実験1】雄のWistar系ラットを用い、ペントバルビタール30mg/kgの腹腔内麻酔下に、ラットにおける主な脳静脈還流路である両側外頸静脈、ならびに頸部リンパ節の結紮を含む頸部郭清術を施行した。24時間および48時間後に断頭し、乾湿重量法にて大脳半球水分含量を測定し、脳浮腫発生の有無を検討した。これを頸部切開を行っただけのシャム操作群の値と比較した。 【実験2】実験1と同様の両側頸部郭清ラットで、48時間後にエバンスブルー(EB)2%溶液を静注し、30分間に断頭後、脳冠状断面におけるEBの漏出を観察してblood-brain barrier(BBB)の障害を検討した。また、病理組織学的変化についても検討を加えた。 【結果】実験1で、24時間ならびに48時間後の実験群の脳水分含量は、シャム操作群の値と比較して有意に増加し、脳浮腫の発現を示唆する所見を得た。また、実験2では、一部のラットに部分的なEBの漏出が認められ、BBBの障害を惹起する脳血管透過性の亢進が推察された。また、病理組織学的にも、核濃縮等の神経細胞の損傷所見が得られた。従来より、ラットにおける両側頸静脈結紮による脳浮腫の発生は否定されてきたが、リンパ経路を同時に遮断することで、早期より脳浮腫が引き起こされる可能性が明らかとなり、本手術後の頭蓋内病態を研究する上で、このモデルが有用であることが明らかとなった。
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[Publications] 杉岡,伸悟: "ラット頸部郭清による脳浮腫発生モデル" 日本歯科麻酔学会雑誌. 21. 200-201 (1993)
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[Publications] Kotani,Junichiro: "Effect of cerebral venous congestion on the pressure-volume index in the evaluation of intracranial pressure dynamics." Journal of Neurosurgical Anesthesiology. 5. 121-126 (1993)
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[Publications] 小谷,順一郎: "頸部郭清手術と脳静脈還流障害" 循環制御. 15(掲載予定). (1994)