1993 Fiscal Year Annual Research Report
歯科用金属によるアレルギー発現のスクリーニング法の確立
Project/Area Number |
05671724
|
Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
山中 すみへ 東京歯科大学, 衛生学講座, 助教授 (40085840)
|
Keywords | 歯科用金属 / 細胞毒性 / 刺激性 / 感作性 |
Research Abstract |
金属装飾品や歯科用金属によるアレルギー性接触皮膚炎の症例が多く報告され、歯科用金属によるアレルギー発現の簡易なスクリーニング法が求められている。そこで今回、水銀やクロム、ニッケル、パラジウムなど歯科用金属10種について、皮膚貼付試験(パッチテスト)を行い、金属の感作性を調べるとともに、培養細胞を用いて13金属の細胞毒性を検索し、以下の結論を得た。【.encircled1.】健康な成人563名を対象としてパッチテストを行った結果では、水銀での陽性率が14.2%と最も高く、次いでコバルトの10.3%,スズの9.7%、ニッケルの4.1%、さらに銅、パラジウム、クロム、金、白金、銀と続いた。このように溶解性の低い金や白金でも感作性があることがわかった。【.encircled2.】スズや銅、銀では感作性と一次刺激性の判別に困難さがあり、パッチテストでのスクリーニングにも問題があった。【.encircled3.】肺繊維芽細胞(CHL/IU)と口腔内類表皮癌由来細胞(KB)の2種類の培養細胞を用いて、24時間あるいは48時間培養後に細胞増殖を調べ、各金属の50%コロニー形成阻害濃度(IC_<50>)を比較したところ、歯科用金属の中でもイリジウムやインジウム、チタンは細胞毒性が弱く、IC_<50>値は50ppm前後であった。一方、銅や水銀、ニッケル、コバルトなどは細胞毒性が弱く、IC_<50>値は5ppm以下であった。【.encircled4.】13金属のほとんどのIC_<50>値はCHL/IU細胞に比べてKB細胞において低く、毒性が弱く表れる傾向にあり、細胞の特異性がみられた。【.encircled5.】培養細胞による50%コロニー形成阻害濃度(IC_<50>)を、ラットやマウスによる経口LD_<50>値と比較的よく相関した関係(r=0.76)がみられたことより、培養細胞を用いた安全性評価はin vitroの簡易な毒性試験法として有効であることがわかった。しかし今回の培養細胞を用いた試験法では、細胞膜に対する刺激性を評価することができても、感作性のスクリーニングは不可能であった。今後は培養細胞や実験動物を用いた感作性試験法を確立し、ガリウムやチタンなど歯科用の新しい金属について調べるとともに、パッチテストよりもさらに簡易で鋭敏なアレルギーのスクリーニングを検討していく予定である。
|
-
[Publications] 山中すみへ他: "歯科用金属による粘膜刺激性および感作性" 歯科学報. 93. 386-
-
[Publications] 高柳篤史、山中すみへ他: "唾液中微量金属濃度の通常値" 日本衛生学雑誌. 48. 185-
-
[Publications] 山中すみへ他: "歯科用金属の安全性評価(培養細胞によるin vitro試験)" 口腔衛生学会雑誌. 43. 554-555
-
[Publications] 太田薫、山中すみへ他: "培養細胞(CHL/IUおよびKB細胞)による歯科用金属の安全性評価" 歯科学報. 93. 1076-
-
[Publications] 菊田聡子、山中すみへ他: "歯科金属アレルギーの診断におけるリンパ球幼若化試験の有用性" 歯科学報. 94(予定).