1993 Fiscal Year Annual Research Report
環境汚染物質により誘起される生体内フリーラジカル反応の無侵襲測定法による研究
Project/Area Number |
05671802
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
藤井 博匡 財団法人 東京都臨床医学総合研究所, 炎症研究部門, 研究員 (70209013)
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Keywords | 発癌物質 / ニトロソ化合物 / ESR / 無侵襲測定 / in vivo ESR |
Research Abstract |
我々をとりまく環境には、生体にとって有害な発癌物質及びその前駆体がいたる所に存在している。これらの物質は、存在する環境条件によって生体に対してさまざまな化学反応を引き起こす可能性がある。本研究では、環境汚染物質であり、また、発癌物質でもあるニトロソ化合物を取り上げ、このニトロソ化合物が生物体内に混入した際に生体内で誘起されるフリーラジカル反応の基礎的解析を、無侵襲の測定手段であるin vivo ESR法を用いて行った。 (1)無侵襲in vivo ESR装置の開発:ラットまでの小動物を測定しうるin vivo ESR用のキャビティーを開発した。このキャビティーは、誘起されるマイクロ波の電場成分が試料を横切らない構造になっており、誘電損失をできる限り押さえることができたため、従来のキャビティーに比し感度を10倍程度上げることができた。 (2)ニトロソ化合物が生体内で誘起するフリーラジカル:マウスの皮膚及び体内にニトロソ化合物を投与し、上記のin vivo ESR装置を用いて誘起されるフリーラジカルの観測を試みた。代表的なニトロソ化合物であり発癌物質であるニトロソベンゼンとニトロソトルエンを用いたところ、ニトロキシドラジカルに由来するESRスペクトルの観測に成功した。これは、薬物が原因で生体内で生成したフリーラジカル種を無侵襲で測定した世界で最初の快挙であった。このフリーラジカル種がどのような構造のラジカルに由来するのか、in vitro系での基礎研究を行ったところ、まず生体内でニトロソ化合物からハイドロナイトロオキシドラジカルが生成され、このラジカルが体内の不飽和脂肪酸と反応して新たなラジカル種が生成したことを明らかにすることができた。今後は、この不飽和脂肪酸に結合したラジカル種が、生体内でどのような反応に関与していくのか、検討していくつもりである。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Fujii,H.: "In vivo studies of the metabolic fate of nitrosobenzene in the mouse." Mag.Reson.Med.31. 77-80 (1994)
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[Publications] Fujii.H.: "Biologaical reduction reactions of nitroso compounds in biological systems." Free.Rad.Res.Commun.(in press).
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[Publications] 藤井博匡: "電子スピン共鳴法の医学、生物学への応用" アイオニクス. 20. 3-8 (1994)