1994 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトチミジル酸合成酵素遺伝子の特異な発現調節領域の解析
Project/Area Number |
05671835
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
竹石 桂一 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (90012608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀江 信之 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助手 (70209287)
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Keywords | チミジル酸合成酵素 / 転写制御 / DNAエレメント / 転写後制御 / RNA結合蛋白質 / DNA多型性 / 細胞分化 / 核内因子 |
Research Abstract |
昨年度欠失変異体を用いた解析から、ヒトチミジル酸合成酵素(TS)遺伝子の5'末端領域に、その発現調節に関わる複数のエレメントの存在を明らかにした。本年度はまず、昨年度示唆された各エレメントを特定するため、点突然変異体を用いてプロモーター領域をより詳細に解析した。その結果、SpI結合部位、CAボックス及び負の制御エレメントを同定した。このSpI結合部位はGCボックスとは異なるが、Splの結合を実際に確認した。 ヒトTS遺伝子の翻訳開始コドンのすぐ上流には、特異な構造をした機能不明な逆向き繰り返し配列が存在する。今回この繰り返し単位の数に多型性が存在し、それによって遺伝子発現の活性が影響されることが示唆された。また、この配列が転写後の段階で遺伝子の発現調節に関与している可能性を探るため、その領域に対するRNAに結合する細胞内因子について解析した結果、核及び細胞質の抽出液いずれにもTS mRNA結合性の蛋白質因子の存在が判明した。また、ヒト白血病HL-60細胞を活性型ビタミンD3でマクロファージ様細胞に分化させた場合の従来の知見と同様、レチノイン酸によって顆粒球に分化させた系においても、TS遺伝子結合性核内因子NF-TS3の分化に伴う変動が示された。 本研究及びこれまでの知見から、ヒトTS遺伝子においてプロモーター及びそれに対しシスで、正または負に働く多くの調節エレメントの存在が判明し、またこれらの配列に対してトランスに作用する蛋白質因子もいくつか確認され、ヒトTS遺伝子の微妙な発現調節に関わる多くの因子が明らかになってきた。今後さらに新たな因子を同定すると共に、それら因子の役割、特に細胞環境の変化に伴う正と負に作用する因子の変動を解明することによって、ヒトTS遺伝子の高度な発現調節の全貌が明らかになってくると思われる。
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