1993 Fiscal Year Annual Research Report
リン脂質代謝異常からみた糖尿病での白血球機能低下の解析
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05671838
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
中川 靖一 北里大学, 薬学部, 教授 (00119603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 源一郎 北里大学, 薬学部, 助教授 (20050502)
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Keywords | リン脂質 / アラキドン酸 / 白血球 / 糖尿病 |
Research Abstract |
本年度においては、ストレプトゾドシン(STZ)によって誘発した糖尿病ラットを用いて、各組織、細胞でのリン脂質、脂肪酸組成の変動について検討した。 糖尿病誘発後、8週間のラット肝臓、腎臓、心臓、脳、脾臓、血小板、赤血球、マクロファージ、好中球の脂質組成を調べたところ、いずれにおいてもリン脂質組成に有意な変化は認められなかった。しかし、脳を除いた、組織、細胞においてはリン脂質の脂肪酸組成に大きな変化がみられ、共通した変化として、リノール酸の増加、アラキドン酸の減少がみられた。特に、心臓のコリン型リン脂質(CGP)のアラキドン酸の減少が著しく、正常の約50%であった。糖尿病でのCGPからのアラキドン酸の減少の経時変化を調べたところ、肝臓が糖尿病誘発1週間で有意なアラキドン酸の減少がみられ、続いて、心臓、腎臓では2週間で減少がみられた。好中球、アクロファージでは4週では変化はみられなかったが、8週間で著しいアラキドン酸の減少がみられ、免疫担当細胞での変化は他の組織に比較して遅いものであった。糖尿病誘発8週のラット好中球リン脂質のアラキドン酸の減少はCGPで45%であり、イノシトール型リン脂質(IGP)では25%であった。 好中球をA23187で活性化し、リン脂質より遊離されるアラキドン酸量を螢光HPLCで測定した。活性化好中球では遊離アラキドン酸のみが生成し、他の遊離脂肪酸の蓄積がみられないことから、リン脂質より選択的にアラキドン酸を放出する経路が存在することが分かった。糖尿病との比較を行うと、正常の好中球ではA23187により1.3nmole/10^7cellsの遊離アラキドン酸が生成したが、糖尿病の好中球では0.7nmole/10^7cellsと著しく減少していた。 これらの結果より、糖尿病ラットの好中球ではアラキドン酸代謝に異常が生じ、好中球の機能発現に深く関わるアラキドン酸の生成が強く抑制されていることが明かとなった。
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