1993 Fiscal Year Annual Research Report
水産食品におけるグリシンベタインおよびアルギニンの呈味効果に関する研究
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05680035
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
鴻巣 章二 共立女子大学, 家政学部, 教授 (00011817)
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Keywords | グリシンベタイン / 味 / 閾値 / 官能検査 / オミッションテスト / 水産食品 / エゾボラ / エキス成分 |
Research Abstract |
水産物に広く分布するグリシンベタイン(GB)は,そう快な甘味を有し,これを多く含む水産食品の甘味に寄与するといわれているが,これを実証した研究は極めて乏しい。そこで,GBの閾値と味質を明らかにするとともに,水産食品におけるその呈味効果を解明する目的で以下の研究を行った。 先ず,0.125から1.0%(w/v)までの4段階の2倍上昇系列のGB水溶液を水と組み合わせて3点識別試験を行うとともに,それぞれの濃度における味質を調べたところ,GBは0.5%以上で水と有意に識別され(p<0.001),閾値は0.25から0.5%の間にあると判断された。また,味質はいずれの濃度においても甘味に苦味を伴うものであった。 次に,GB含量の高い巻貝のエゾボラ(Neptunea polycostata)を選び,可食部(筋肉)から80%エタノールおよび5%過塩素酸エキスを調製し、それぞれに含まれる成分を精査した。そして,各エキス成分の分析値に基づいて調製した合成エキスを用いるオミッションテストによりエゾボラにおけるGBの呈味効果を調べた。その結果,エゾボラのエキス成分の中ではGBが1.5g/100gと単一成分として最も多く,1.5g/100mlのGB溶液は閾値付近の濃度と同様に甘味に苦味を伴っていた。しかし,オミッションテストでは,GBを欠く合成エキスは有意に識別された(p<0.05)ものの甘味の強さに有意差は認められず,合成エキスで指摘された苦味は,GB単独溶液のそれに比べて弱かった。 以上のとおり,従前の認識とな異なり,GBの味質は甘味に苦味を伴うものであり,その甘味への寄与はエゾボラ筋肉ではあまり大きくないと判断された。
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