1993 Fiscal Year Annual Research Report
コンピュータシミュレーションを用いた合理的な投運動のメカニズムの解析
Project/Area Number |
05680076
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小嶋 武次 東京大学, 教養学部, 講師 (20111437)
|
Keywords | 投運動 / 数学モデル / 最適動作 |
Research Abstract |
ボール投げを行うに際しては、体幹に近位の部分から遠位の部分へと順に運動を起こしていくのが技術的に良いとされている。その科学的根拠を明らかにするために、体幹を固定して肩から先のみを用いて一平面内で行う投運動の平面3リンク数学モデルを製作し、コンピュータシミュレーションを行った。肩、肘、手首に駆動源として、それぞれ出力特性がヒトの筋に似たトルクジェネレータを取付けた。ボールの水平方向への投距離を評価基準とし、各トルクジェネレータの活動開始時刻を系統的に変え、最大の投距離が得られる活動開始時刻の組合せを求めた。その結果、その活動開始時刻は肩、肘、手首の順となり、ヒトのそれと同じ傾向を示した。そして、このときの活動開始時刻を基準とし、その時刻を変えることにより得られた結果との比較により、以下のことが明らかになった。 1.肩のトルクジェネレータの活動開始から肘のそれの活動開始までの時間が投距離に大きな影響を及ぼした。2.肘のトルクジェネレータの活動開始時刻を変えたところ、各トルクジェネレータの仕事量の総和である総仕事量及びそれに対してボールが得た運動エネルギーの比は投距離が最大の時に最大もしくは最大に非常に近かった。そして、活動開始時刻の変化に伴うこれらの指標の変動は、総仕事量の方が約三倍大きかった。3.肘のトルクジェネレータの活動開始が早過ぎると、自身の仕事量は増加するが、上腕の運動を抑制し肩のトルクジェネレータの仕事量が減少し、総仕事量も減少した。一方、肘のそれの活動開始が遅すぎると、自身の仕事量が減少した。また、上腕の運動は促進されるが、肩のトルクジェネレータの特性によりその仕事量はあまり増加せず、総仕事量は減少した。 以上を要約すると、第一に総仕事量を大きくするために、第二に多くの運動エネルギーを効率よくボールに伝えるために上述した運動順序が望ましいと考えられる。
|