Research Abstract |
アメリカにおける日系企業の立地,日本におけるアメリカ企業の立地を空間的に分析した結果,企業活動からみた両国の都市システム,および両国の都市間依存関係には次のような特色があることが判明した.1.日系企業の進出には,業種によって立地展開が異なる.1970年代前半までは,アメリカ東部や西部の大都市周辺地域に小売業,軽工業,農林・水産業関連企業が多数新規立地したが,1980年代になると,中西部や南部の非都市化地域に安価な工場敷地や豊富な労働力を求めて労働集約的製造業が新規立地するようになった.1980年代中葉以降は,情報サービス,広告代理業,運輸・通信などのサービス業,不動産業,金融・保険業がニューヨーク,シカゴ,ロサンジェルスなど大都市の都心地区で集中立地がみられた.2.日系企業の現地化には,代理店設置→販売子会社の設立→量産工場の建設→研究・開発センターの設置→地域統括会社の設立という一連のプロセスが認められ,最近では北米自由貿易協定により,カナダ,メキシコを巻き込んだ,国際分業体制を構築する動きが顕著になっている.3.日本における外資系企業の6割はアメリカ企業である.日本国内におけるスムーズな流通,販売をにらんで,日本の企業との合弁にすることが多い.統括本社のほとんどは東京都心3区におかれる.立地展開は,大阪,名古屋,広域中心都市と日本の国家的都市群システムの階層に沿って支社や事業所を設置するパターンが認められる.3.日本の都市群とアメリカの都市群との相互依存関係に関しては,アメリカではニューヨーク,シカゴ、ロサンジェルスなど結節中心都市が空間的に分散しているのに対し,日本における核は東京が圧倒的な位置を占め,大阪や名古屋とアメリカ諸都市との経済的結びつきは希薄である。
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