1993 Fiscal Year Annual Research Report
近世小氷期の気候特性とその成因-近畿・東海地方の場合-
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05680140
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
水越 允治 三重大学, 人文学部, 教授 (10024423)
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Keywords | 近世小氷期 / 気候復元 / 近世文書 / 気候特性 / 近畿・東海地方 / 気候成因 |
Research Abstract |
1.本年度には,先ず18世紀の天候記録を収集することから着手し,後半部については,ほぼ予定どおりの記録を収集し終えた.前半部については現在,なお収集整理中である. 2.復元作業は資料の揃った18世紀後半について主として実施し,19世紀の結果につなげて,次のような成果がこれまでに得られている. (1)冬の寒さ 18世紀の終り頃,特に1780年代(天明年間)には,30年平均値にして現在より約0.5℃程低い状態が認められる.これは1820年代前後の低温とほぼ同じ程度である.その間の1790-1810年の頃には,比較的暖冬であった.この結果は諏訪湖の御神渡りの見られなかった年の出現状況ともよく一致している. (2)冬の太平洋側の降水量 18世紀の終り頃にはやや少ない傾向が認められる.この傾向は19世紀にも続き,1830年代頃から増加に向っている. (3)夏の暑さ 8月の平均日最高気温の復元結果をみると,1780年代の低温傾向は顕著であり,1830年代よりも冷夏年の出現頻度が大きくなっている. (4)夏の乾湿条件 1780年代は1830年代と並んで晴天日が少ない時代であった.ただし,顕著降水日は1830年代に比べるとやや少ない.1790年代から1820年代にかけては,晴天日の多い時代であり,旱魃の記録の多さからも,この時代の暑さが裏付けられる. 3.以上から(1)1780年代を中心にした時代には,冬季に寒冷少雨・夏季に冷涼多雨. (2)19世紀初めには,冬季に厳寒少雨・夏季に酷暑少雨. (3)1830年代以後には,冬季に温暖多雨・夏季に冷涼多雨のパターンが卓越したことが推定できる.なお昨年(1993)の夏の天候推移は天保7(1836)年のそれと酷似しており,両年の大気大循環のタイプの類似性をうかがわせるものがある.
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[Publications] 水越允治: "文書記録による小氷期の中部日本の気候復元" 地学雑誌. 102. 152-166 (1993)
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[Publications] 水越允治: "近世文書の天候記録による三重県の気候復元" 三重県史研究. 9. 57-72 (1993)
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[Publications] 水越允治: "近世小氷期の気候復元-天明期から天保期まで-" 三重大学人文学部文化学科研究紀要「人文論叢」. 11. (1994)