1994 Fiscal Year Annual Research Report
外国語運用における「繰り返し」の機能:日本語比較と英語教育・日本語教育への応用
Project/Area Number |
05680217
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小林 ひろ江 広島大学, 総合科学部, 助教授 (50205481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広瀬 恵子 愛知県立大学, 外国語学部, 助教授 (40145719)
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Keywords | 繰り返し / 発話 / 外国語運用 / 会話分析 / リペア |
Research Abstract |
平成6年度は文字化された会話データの分析に取り組んだ。5年度に、より厳密に定義した「繰り返し」の機能カテゴリー(Kobayashi & Hirose,JALT Journal,印刷中)に従い、研究補助者の協力を得て、日本語と英語の会話データ(テープ64本、延べ11時間分)をコーディングした。この分析の結果、研究目的とした三つの点の解明に関して以下のことが分かった。1)日本語話者と英語話者の比較では、英語話者の方が「繰り返し」をより頻繁に使い、特に、思考の言語化プロセスにその使用が多く見られた。一方、日本語話者の場合、このプロセスには「繰り返し」に代わる他の方法(例、ポ-ズの一種である「あの-」や母音の引き伸し)の使用が見られ、また日本語話者の特徴としては、発話者同士の相互作用を円滑にするための「繰り返し」の使用が際立った。2)「繰り返し」が第2言語学習者特有のものかどうかについては、日本語と英語の頻度の差はあるもののその傾向を示した。特に、思考の言語化プロセスや発話の文法的修正を行うために学習者は「繰り返し」を頻繁に使用した。3)「繰り返し」の頻度と機能は発話内容の難易度と関係については、難易度の高い会話トッピクの場合、総発話量が難易度の低い会話トッピクより少ないにもかかわらず、思考の言語化プロセスにおける「繰り返し」の頻度が高くなったが、発話者同士の相互作用にかかわる「繰り返し」の頻度は低下した。ただし、この傾向は英語に顕著に見られたが、日本語には特にその傾向は見られなかった。以上、上記の研究結果は量的な分析に基づいたものが中心になっているので、同じデータをさらに詳細に分析し考察すればより深い知見が得られるものと考える。
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