1994 Fiscal Year Annual Research Report
環境の重金属ストレスに対するラン藻の防御機能の分子レベル解析
Project/Area Number |
05680457
|
Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 正 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70092385)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高寺 喜久雄 東京大学, 生産技術研究所, 教務職員 (40216669)
吉田 章一郎 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (40111570)
|
Keywords | 亜鉛 / カドミウム / ラン藻 / 重金属ストレス / メタロチオネイン / タンパク質 / 質量分析装置 / クロマトグラフィー |
Research Abstract |
逆相高速液体クロマトグラフ(RP-HPLC)と誘導結合プラズマ質量分析装置(ICPMS)とを連結した計測方法(HPLC/ICPMS法)により,Zn^<2+>あるいはCd^<2+>ストレス下で培養したラン藻中に,主に2つのメタロチオネイン(MT)アイソフォームが誘導されることを明らかにした.これら2つのアイソフィームはアミノ酸組成にわずかな相違が認められた.Zn-MTアイソフォーム溶液中にCd^<2+>を添加すると定量的にZn-MTからCd-MTへの金属交換が生じた.これはMTに対してCd^<2+>の方がZn^<2+>よりも高い親和性をもつことを反映している.この交換過程において2つのアイソフォームの相対比にほとんど変化がなかったことから,これらのアイソフォームは同レベルのCd親和性をもつことがわかった. これら2つのアイソフォームは,Zn^<2+>投与(1-2020μM)においてほぼ一定の比で誘導されたのに対し,Cd^<2+>投与(0.5-10μM)の場合は投与量に応じて誘導量の比が変化した.このことから,Cd^<2+>の無毒化には,RP-HPLCクロマトグラフ上で保持時間の短いアイソフォームがより重要な働きをしていることが示唆された. セレン酸あるいは亜セレン酸共存下において,Zn^<2+>ストレスによりラン藻体内に誘導されるMT中へSeが高い濃度で取り込まれることが明らかとなった.亜セレン酸を含む培養液中では,ラン藻破砕後の水溶性画分に含まれる全Se量の58%もがMTと結合していた.このMT中のSeは,主に2つの化学形態で存在することを初めて明らかにした.ひとつはS-Se結合で,2-メルカプトエタノールの存在により還元的に開裂する.もう一つは,セレノシステインが合成されたのちMTのペプチド鎖に取り込まれる形態である.培養液に加えたセレン酸と亜セレン酸とでは,MT中へのSeの取り込みにほとんど差はみられなかった.
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] K.Takatera他: "HPLC/ICP Mass Spectrometric Study of the Selenium Incorporation into Cyanobacterial Metallothionein Induced under Heavy-Metal Stress" Analytical Sciences. 10. 567-572 (1994)
-
[Publications] K.Takatera他: "Characterization and Quantiation of Metallothionein Isoforms Induced in a Cyanobacterium Using Reversed-phase HPLC/ICP Mass Spectrometry" Analytical Sciences. 10. 907-912 (1994)