1994 Fiscal Year Annual Research Report
湿原の水及び水質環境への人為的妨害の影響と保全対策
Project/Area Number |
05680475
|
Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
橘 治国 北海道大学, 工学部, 助手 (90002021)
|
Keywords | 湿原 / 涵養水 / 地下水 / 水質 / 栄養塩 / 降水 / 水環境保全 / みずごけ |
Research Abstract |
北海道には、貴重な動植物が見られる高層湿原がまだ残されている。これまで湿原は大規模農業の場として開発された歴史を持ち、現在も進行中である。少ない自然の大地が、どんどん減少している。 今、この自然の状態を保つ湿原を守らなければ、永久に貴重な自然は失われてしまう。筆者は、湿原の保全のための基礎研究として、平成5年、6年の2年間、湿原を涵養する地下水とその水源について、水質面を重点に調査を行った。対象湿原を、北海道北部のサロベツ湿原と札幌近郊の月ヶ湖湿原とし、前者については通年的に、後者については比較研究の場として調査を実施した。平成6年度は、サロベツ湿原の調査を重点に、6回の地下水定期調査(3月30日、5月18〜19日、6月24〜25日、8月15〜16日、11月4〜5日)、1回の降雨時地下水調査(10月19〜21日)、1回の泥炭調査(8月15〜16、11月4〜5日)を実施した。また泥炭からの化学成分の溶出特性を室内実験によっても解明した。主な結果を要約すると以下のようになる。(1)典型的な高層湿原は、純粋に降水で涵養されており、他の不純物の混入を許さない。(2)高層湿原域は、栄養的には貧栄養で、有機成分が多い、極めて特殊な水環境にある。(3)地下水位の低下は、泥炭の分解を早め、泥炭からの栄養の供給量を多くする。これはミズゴケ以外の植物の侵入を許す結果となる。(4)湿原周辺から土壌の持ち込みが、笹などの湿原植生を破壊する植物の侵入を促進する。河川の開削などには注意が必要であろう。(5)泥炭質は、極めて特異な化学的性状を示した。(6)他、湿原の保全事業は、急速に変貌しつつある環境を残すという意味で、環境政策の中で重視しされなければならない。本研究の成果は、そのための基礎資料として十分価値があったといえる。
|
-
[Publications] 橘 治国他4名: "湿原涵養水の水質" 寒冷技術シンポジウム講演論文集. 9. 279-284 (1993)
-
[Publications] 川村 哲治,橘 治国他1名: "サロベツ湿原涵養水の水質" 土木学会北海道支部論文報告集. 50. 684-687 (1994)
-
[Publications] 橘 治国他5名: "高層湿原涵養水の水質" 寒冷技術論文・報告集. 10. 216-221 (1994)
-
[Publications] 橘 治国他3名: "高層湿原地下水の水質とその涵養" 環境工学研究論文集. 31. 91-98 (1994)