1993 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子工学と光ピンセットを用いたキネシンの運動再構成系
Project/Area Number |
05680572
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
豊島 陽子 東京大学, 教養学部, 助教授 (40158043)
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Keywords | キネシン / 微小管 / モーター蛋白質 |
Research Abstract |
細胞運動を担うモーター蛋白質(ミオシン、ダイニン、キネシン等)の分子メカニズムの研究には、再構成系での運動観察が重要な手法となっているが、従来の再構成運動系では、モーター分子は非特異的に基板に吸着され、特定の部位で固定することはできなかった。そのため、運動活性がモーター分子の持つ能力によるものか、吸着の仕方が適当であるか否かによるものかを区別することができなかった。そこで、本研究では遺伝子組換え技術を用いてモーター分子に反応性の高い特異残基を導入し、モーター分子の特定の部位を基板に付着させる方法の開発を試みた。 キネシンは反応性の高いSH基を持たないので、大腸菌で大量発現されているショウジョウバエのキネシン遺伝子を用い、モータードメイン(頭部)にシステインとしてSH基を導入した。導入するシステインのSH基の反応性を高めるために、リジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸をシステインの隣に配した塩基配列を、PCR法を用いてキネシン頭部のC末端の遺伝子に挿入した。作製したクローンは大腸菌での発現率が良く、GSTのフュージョン蛋白質として大腸菌蛋白質の50%近くを占めた。単離されたキネシン頭部の蛋白質は、ATPase活性を持ち、微小管結合能力を持つものであった。導入したシステイン残基はビオチン-マレイミドとの反応性が非常に高く、特異的に修飾された。このようにビオチン化されたキネシン頭部はアビジンに結合し、更にアビジンを介してガラス上のビオチン化BSAに結合し、再構成運動系で微小管を動かすことができた。運動の速さは、0.8μm/sec前後であり、intactなfull lengthのキネシンと同様であった。 この新たな系により、キネシン頭部のみでも微小管を動かすのに十分であることを明らかにすることができた。モーター分子の特定の部位を固定することは、ミオシン頭部でも成功しており、汎用性の高いものであり、今後、運動発生機構の核心に迫る研究の展開が期待できる。
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[Publications] Johara,M,Toyoshima,Y.Y.et al.: "Charge-reversion mutagenesis of Dictyostelium actin to map the surface recognized by myosin during ATP-driven sliding motion." Proc.Natl.Acad.Sci.USA.90. 2127-2131 (1993)
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[Publications] Shimizu,T,Toyoshima,Y.Y,& Vale,R.D.: "The use of ATP analogs in the study of cell motility." Mehods in Cell Biology. 39. 167-177 (1993)
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[Publications] Itakura,S.,Yamakawa,H.,Toyoshima,Y.Y.,et al.: "Force-generating domain of myosin motor." Biochem.Biophys.Res.Commun.196. 1504-1510 (1993)
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[Publications] 豊島陽子: "in vitro 運動系" Annual Review 細胞生物学 1993. 3. 145-155 (1993)
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[Publications] Toyoshima,Y.Y.: "How are myosin fragments bound to nitrocellulose film? In “Mechanism of myofilament sliding in muscle contraction"" Plenum Publishing Co.(ed.Sugi,H.& Pollack,G.H.), 870(7) (1993)