1993 Fiscal Year Annual Research Report
伝達物質放出機構におけるGTP結合蛋白質と細胞骨格系蛋白質の役割
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05680683
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
熊倉 鴻之助 上智大学, 理工学部, 教授 (70129790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今泉 美佳 上智大学, 生命科学研究所, 研究員 (40201941)
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Keywords | 開口放出機構 / 伝達物質放出 / GTP結合蛋白質 / ミオシン軽鎖キナーゼ / カルシウム依存性放出 / ATP依存性プライミング / マストパラン / ヴォルトマニン |
Research Abstract |
本研究の目的は、神経伝達物質放出のモデル系として培養クロム親和細胞を用いて、伝達物質の開口放出機構におけるGTP結合蛋白質(G蛋白質)と細胞骨格系蛋白質の役割を明らかにすることである。本年度は申請者のこれまでの研究結果に基づき、G蛋白質の一つ、GoによるCa^<2+>依存性の抑制的調節、ならびにミオシン軽鎖キナーゼのCa^<2+>依存性機構への関与を、開口放出のツーステップ・モデルの上でそれぞれ明確にするための検討を行った。 ジギトニン処理によって高浸透化したクロム親和細胞(leaky細胞)を用いて、カテコールアミン放出測定実験、神経化学的実験を行い、以下の結果を得た。 1.Leaky細胞からのカテコールアミン放出には、Ca^<2+>によって促進されるATP依存性プライミング過程とCa^<2+>依存性ATP非依存性開口過程のツーステップが実験的に識別される。ミオシン軽鎖キナーゼの特異阻害剤(Wortmannin)および活性阻害ペプチド(SM-1)を作用させた細胞を用いて、各ステップの受ける影響を測定した結果、ミオシン軽鎖キナーゼがATP依存性プライミング過程の必須因子であることが明かとなった。この結果は、プライミング機構の解明に重要な知見を提供するものである。 2.複数の異なるG蛋白質を直接活性化することが知られているマストパランは、細胞内Ca^<2+>上昇を伴わずに開口放出を引き起こす一方、Leaky細胞からのCa^<2+>依存性カテコールアミン放出にたいしては阻害作用が知られている。Leaky細胞からの、Ca^<2+>によって促進されるATP依存性放出と、Ca^<2+>依存性ATP非依存性開口放出に対する影響を測定解析した結果、マストパランによる抑制はATP依存性プライミング過程への選択的抑制によるものであった。この作用機序は、Goの活性化を介していると考えられることから、Goはミオシン軽鎖キナーゼと共にATP依存性プライミング過程を調節することが示唆された。今後は、ミオシン軽鎖キナーゼの活性調節とGoの関係を解析することが必要である。
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[Publications] 笹木君仁: "開口放出のツーステップ・モデルにおけるミオシン軽鎖キナーゼの役割" 神経化学. 32(1). 122-123 (1993)
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[Publications] 熊倉鴻之助: "開口放出の調節機構-クロマフィン細胞を中心に-" 生体の科学. 44(3). 215-223 (1993)
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[Publications] Kimihito Sasaki: "Effects of Mastoparan on Ca^<2+>-Evoked Exocytosis in Digitonin-Permeabilized Chromaffin Cells." Neuroscience Research. Sappl.18. S92 (1993)