1993 Fiscal Year Annual Research Report
鳥脳可塑性を制御するアセチルコリンの作用の分子機構
Project/Area Number |
05680703
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
坂口 博信 独協医科大学, 医学部, 講師 (30162291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 望 独協医科大学, 医学部, 教授 (30049126)
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Keywords | キンカチョウ / 歌の臨界期 / 歌学習 / 可塑性 / アセチルコリン / イノシトール大謝 / GAP-43 |
Research Abstract |
キンカチョウの雄は、臨界期に父親の歌を鋳型として歌を学習する。この歌学習は歌を産生する大脳発声中核を中心とする神経回路で生じている。我々は、大脳発声中核において、歌の臨界期に一過性にアセチルコリンとその合成酵素であるChATの酵素活性が増加していることを見つけた(1989、1991、Dev.Brain Res.)。アセチルコリンが、どのような機構で鳥の歌学習に関係しているのかを明らかにする目的で実験を行った。 本年度は、先ず、成鳥の大脳発声中枢RAのアセチルコリン刺激によるイノシトール代謝回転をRIラベル法で測定した。その結果、刺激なしのコントロールと比較して有意な増加が見られたので、アセチルコリンはRAの細胞において、Cキナーゼの酵素活性を活性化することが明らかになった。この事は、アセチルコリンがCキナーゼを活性化し、ある機能蛋白質をリン酸化することによりシナプスの可塑性を制御している可能性を示唆する。 次に、Cキナーゼの基質あり、シナプスの可塑性になんらかの重要な役割を担っている事が知られているGAP-43のモノクローナル抗体を用いて、歌の臨界期におけるRA上での発現を調べた。その結果、歌の学習期の初期に、神経細胞体上に陽性終末が多数見られ、段々とその数が減少していくことを見つけた。歌の学習期に、あるRA神経細胞体上のGAP-43陽性シナプスの数が変化するという現象は、臨界期におけるシナプスレベルでの変化を検出したことになり、今後、入力シナプスの起源と入力する神経細胞の種類、アセチルコリンとの関連を明らかにすることにより、歌学習の分子機構に迫っていきたい。
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