1993 Fiscal Year Annual Research Report
腸管アウエルバッハ神経叢のシナプス伝達における一酸化窒素(NO)の役割
Project/Area Number |
05680708
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
田村 謙二 東海大学, 医学部・生理科学, 助教授 (20163686)
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Keywords | モルモット / 腸管神経系 / 一酸化窒素 / シナプス伝達 / NO / アウエルバッハ神経叢 |
Research Abstract |
本年度では、水溶液中でNOを遊離する作用のあるSodium Nitroprusside(ソヂウムニトロブルシッド、以下Na-NPと略す。)を用いて、腸管神経系のアウエルバッハ神経細胞でのシナプス電位に対するNOの作用を検討した。 モルモットから摘出した小腸のアウエウバッハ神経叢を用い、顕微鏡をもちいて、腸管神経細胞の細胞内電位記録を行った。小腸アウエルバッハ神経では、主にミリ秒単位の早いfast Excitatory Post-synaptic potentials(fast EPSPs)と秒単位のslow EPSPの二種類の興奮性シナプス電位が観察された。 Fast EPSPはアセチルコリンによるシナプス電位であるが、これは高濃度のNa-Npを投与しても変化が見られなかった。一方slow EPSPは、その伝達物質が未同定の興奮性シナプス電位であるが、これはNa-NPにより容量依存性に抑制された。さらにNa-NPによるslow EPSPの抑制は、酸化ヘモグロビンやメチレンブルーによって逆に拮抗された。このことからNa-NPによる抑制は、遊離されたNOによるものであり、NOは腸管神経系においては、非アドレナリン性非コリン性の興奮性シナプス伝達に選択的に作用すると考えられた。 またNOは、サブスタンスP、セロトニン、フォルスコリンによるシナプス後膜の脱分極には変化を与えなかったことから、シナプス前終末に作用し、シナプス伝達物質の放出を抑制すると考えられた。
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