1994 Fiscal Year Annual Research Report
マウスのter遺伝子による始原生殖細胞の欠損と奇形腫化に関する発生工学的解析
Project/Area Number |
05680736
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
野口 基子 静岡大学, 理学部, 助教授 (40021951)
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Keywords | マウス / ter(tevatoma)遺伝子 / 始原生殖細胞 / 生殖細胞欠損遺伝子 / 奇形腫形成 / 発生工学 / 再構成精巣 / Terコンジェニック系統 |
Research Abstract |
本研究は、1つの劣性遺伝子が引き起こす先天性不妊と精巣性テラトーマの動物モデル系として、マウスの始原生殖細胞の増殖を抑制し、且つ、特定の遺伝的背景においては、始原生殖細胞のテラトーマ化を促進する変異遺伝子ter(teratoma)の作用点が、生殖細胞にあるか、或いは、生殖細胞の環境をなす体細胞にあるかを知るために、terコンジェニック系統と129/Sv-ter系統の、始原生殖細胞と胎仔精巣の体細胞を、ter遺伝子型に関し種々に組み合わせ、再構成精巣を作出し、生殖細胞の欠損或いは精巣性テラトーマの形成が起きる組み合わせを、発生工学的に解析することを目的として、以下の研究実績を得た。 1。terコンジェニック系統には、ter/ter(生殖細胞欠損)、+/terおよび+/+(ともに正常な精巣)の3種の遺伝子型が存在するが、ter遺伝子座が第18番染色体のGrl-1遺伝子座と連鎖し、Grl-1のミニサテライトDNAのPCR多型により、胚から成体まで各ter遺伝子型を判定することができた(Sakurai et al,1994)。ter/ter型8.0日胚から始原生殖細胞の欠損が確認できた(Sakurai et al,印刷中)。そこでLTXBJ-ter系統の各胎仔のter遺伝子型をこの方法で判定し、胎仔の精巣の生殖細胞と体細胞を培養分離し、ter/+及び+/+型生殖細胞を同遺伝子型あるいはter/ter型の体細胞と組み合わせ、懸滴培養法と移植で、再構成精巣へ分化させ組織学的に調べた。生殖細胞は、前者では増殖し分化したが、後者の場合には生殖細胞の分裂周期の特定の時期に死滅した。この結果、ter遺伝子は、少なくとも胎仔精巣の体細胞で機能し、生殖細胞の欠損を起こすことが示された。2。LTXBJ及び129/Sv-ter系統の胎仔精巣の生殖細胞と体細胞を組合せた再構成精巣では、精巣性テラトーマの発症率に種々の差があった。よって、生殖細胞のテラトーマ感受性とその発現を制御する体細胞の役割が示唆された。
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[Publications] Sakurai,T.: "The ter primordial germ cell deficiency mutation maps near Grl-1 on mouse Chromosome 18." Mammalian Genome. 5. 333-336 (1994)
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[Publications] Sakurai,T.: "The ter mutation first causes primordiol cell deficiency in ter1ter mouse embryos at 8 days of gestation" Develop.Growth of Differ.印刷中.