1994 Fiscal Year Annual Research Report
マウスの毛色を指標としたトランスジーン検出法の開発
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05680747
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Research Institution | The Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
米川 博通 (財)東京都臨床医学総合研究所, 実験動物研究部門, 研究員 (30142110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多屋 長治 (財)東京都臨床医学総合研究所, 実験動物研究部門, 研究員 (90175456)
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Keywords | 遺伝子導入動物 / マウス / トランスジェネシィス |
Research Abstract |
マウスにはアルビノと呼ばれる突然変異があり、この突然変異により毛色(眼色)が黒色(有色)から白色(無色)に変化する。このアルビノ遺伝子座は、マウスではc遺伝子座と呼ばれ、その実体はチロシナーゼと呼ばれる酵素であることが判明している。アルビノはチロシナーゼ遺伝子上に突然変異が起こったため、機能を失ったチロシナーゼ蛋白が出現することにより生じる。従って、チロシナーゼ遺伝子をアルビノマウス個体に導入すれば、本来白色のマウスが有色に変化したトランスジェニックマウスが作製できる。本研究では、この事実を逆に利用し、チロシナーゼ遺伝子を導入された遺伝子(トランスジーン)の可視的判別マーカーとしての利用が可能か否かを検討することが目的であった。そのためには、導入されたチロシナーゼ遺伝子が安定に発現すること、(2)検出マーカーとして他の遺伝子と連結して使用するため、チロシナーゼ遺伝子のうち、発現とその安定性に必須の部分のみを残した短縮化チロシナーゼ遺伝子組換え体を作る必要があった。 昨年度は、すでに個体内で発現が確認されている4.5Kbpのチロシナーゼミニジーンを加工し、チロシナーゼ遺伝子の発現に必須と思われる部分のみを持つ短縮化ミニジーン(2.6Kbp)を作製し、トランスジェニックマウスの作製を行った。その結果は期待に反し、約300頭のトランスジェネシス後のマウスから、有色の個体は発見できなかった。しかし、トランスジェネシス直後の2細胞期胚をPCRによりチロシナーゼ遺伝子特異的なシグナルの検出を行ったところ、高率にトランスジーンが検出できた。これらの事実から、この短縮化ミニジーンが遺伝毒性を有するため、このミニジーンを導入された胚が初期発生の過程で死滅することが予想された。 そこで今年度は、本当に胚が初期発生の過程で死滅するのか否かを確認する目的で、トランスジェネシス直後より、マウスの胚をマウス卵管、子宮中より採取し、その確認を行った。その結果、着床後の胚が得られていないことから、もし胚が死亡したとすると比較的早い時期に起こっていることが予想された。しかし、現在までのところその時期を特定することはできず、現在も検討中である。また、短縮化した第1イントロンをもつミニジーンも現在作製中である。 本研究では、研究当初の予想とは異なり、短縮化したチロシナーゼ遺伝子では、安定な発現はおろか、マウス胚に対して致死作用を持つことが判明し、結果的には失敗に終わった。しかし、この結果を参考に、更に研究を進めトランスジーンのレポーターとして使用できるチロシナーゼミニジーンの改良を続行予定である。
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