1993 Fiscal Year Annual Research Report
野生有害哺乳動物に対する食物嫌悪条件づけの応用研究
Project/Area Number |
05710036
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池田 透 北海道大学, 文学部, 助手 (50202891)
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Keywords | 食物嫌悪条件づけ / 塩化リチウム / 有害獣 / キタキツネ / 動物心理学 |
Research Abstract |
野生有害獣対策としての野外における食物嫌悪条件づけの効果を検討した。近年人間生活圏への侵入が問題化しているキタキツネを対象とし、恵庭市郊外のキタキツネの定期的採食が観察される地域を調査地に選択した。 標的食物としてはキツネが調査地において日常的に摂取しているニジマスを用い、魚切片に相当量の粉末塩化リチウム(安全性の高い催吐剤)を混入してキツネの餌場に設置し、摂取後の採食行動の変化を自動車内から観察した。実験スケジュールは第一段階(塩化リチウム未処理餌呈示:7日間)、第二段階(塩化リチウム処理餌呈示:7日間)、第三段階(再度未処理餌呈示:7日間)を設定し、餌の消費数・餌場への侵入回数を記録した。 個体識別されたキツネは5頭であり、うち3頭が複数回確認され2頭が塩化リチウムで処理された標的食物を摂取した(1頭は1回、もう1頭は2回)。第二段階での塩化リチウム処理餌摂取後、直ちに餌消費数・餌場侵入回数は激減し、特に第二段階後半ではともに0となり、キツネの姿も確認されなかった。だが、第三段階にはいるとすぐにキツネがあらわれ、その後餌消費数・餌場侵入回数ともに増加回復を示した。 一般に食物嫌悪条件づけは少ない試行数で長期的効果が得られることが特徴とされてきたが、今回は標的食物回避の兆候は直ちにあらわれたものの、効果は短期的なものであった。その原因としては、キツネが塩化リチウム処理餌と未処理餌を味覚・嗅覚的に識別してしまった可能性があること、および今回のように標的食物が日常的に摂取されている場合、先行する安全学習の効果が強く影響を与えていることが予想され、標的食物投与の方法・投与間隔の問題など、厳密な実験下での効果的条件づけスケジュールの検討が今後の課題であろう。
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