1994 Fiscal Year Annual Research Report
室町幕府の所務沙汰裁決における法理の変遷と裁決システムの変化との関連
Project/Area Number |
05710206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
家永 遵嗣 東京大学, 文学部, 助手 (50242079)
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Keywords | 室町幕府 / 所務沙汰 / 特別訴訟手続き / 通常訴訟手続き / 足利義満 / 足利義持 |
Research Abstract |
本年度の研究では『大日本史料』・『大日本古文書』などの刊本を中心に幕府裁判の裁決下達文書の集積を中心に作業に取り組んだ。時期を一四世紀から一五世紀初めに絞って、幕府・鎌倉府・九州探題・奥州探題の所務沙汰裁決とこれに関連する安堵・恩賞給与・軍事指揮命令に関わる文書の集積を行ない、およそ一万点の史料をカード化した。もっとも、使用できる資金と時間の制約から史料を所蔵機関に赴いて確認する作業までは力が及ばなかった(なお、記録類については家永自身が従前より個人的に研究し史料収集している)。 本格的な内容の分析は個々の史料についてなお時間をかける必要があるが、当初の関心であった「特別訴訟手続き」と「通常訴訟手続き」との拮抗関係を統計的に展望するという目的について、めやすを得ることに成功したと考える。真の画期については義満時代末期に遡る可能性もなお否定できないもの、義持継嗣の頃からかつて南北朝期に見られた典型的な「特別訴訟手続き」に代わって、論人の応訴を求めることをもって訴訟に着手する「通常訴訟手続き」による訴訟進行および裁決の事例が目立つようになる。 この事態は、法理の面では「当知行」の法的な意義が変化する(幕府の安堵・遵行を受けていることを指して「当知行」と称する)ことが関連すると思われる。また、応永一五年一一月(義持継嗣直後)の室町幕府法一五二条に闕所地給与請求に対しては守護に闕所処分の事情を調査させたうえで判断するとの規定が見えることも考慮に値する。この法令は、闕所地給与が複数の請求者による係争の対象となる傾向が強いことを前提としており、幕府が在地における現実の地行関係を見極めたうえで所務沙汰を裁決する指向を有していたことを示唆するからである。今後、調査の成果によりこれらの問題との関係を深めてゆく予定である。なお、本研究の成果を利用して学位請求論文を作成し、審査中である。
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Research Products
(1 results)