1993 Fiscal Year Annual Research Report
日本中世における「家」と「他人」の成立に関する社会史的研究
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05710211
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Research Institution | Matsuyama Shinonome College |
Principal Investigator |
西尾 和美 松山東雲女子大学, 人文学部, 講師 (80248343)
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Keywords | 他人 / 異姓 / 異姓他人 |
Research Abstract |
『平安遺文』『鎌倉遺文』を中心に、平安・鎌倉期の中世史料を網羅的に検索し、「他人」「異姓他人」の語があらわれることについて多面的に分析を行った。具体的には、以下の成果を得た。 1「他人」「異姓他人」の語を検索・整理し、「他人」という観念が歴史的に成立してくるものであること、文書と説話においてはあらわれ方に違いがあることなどを調べた。この検索・整理においては、今年度助成による史料の購入と調査、整理のための謝金の支出が大いに役に立った。 2史料の検討の結果、「他人」「異姓他人」という他者認知の観念が、中世の荘園制的な所有と支配の体系の下での財産の確立・継承、および荘園領主支配の聖化と密接にかかわって形成されてくることをとらえることができた。 3生活レベルにおける「他人」であるかどうかの判断には、教育、報恩の事実が大きな意味をもったことも確認された。 2・3の知見についてはとくに、自分の今までの研究視角をさらに発展させ得るものとなった。 以上の諸点をふまえて、今年度の研究課題に即して、「異姓他人」を中心にした投稿原稿を現在、準備中であるとともに、その他に、後家の権限と女子相続、譲り状の作成と保管など、中世の家と家族にかかわる幾つかの興味深い課題を得ることができ、一連の研究として発表していきたいと考えている。また、直接には今年度の研究課題とは結びつかないが、史料検索の過程で、やはり、中世の荘園制支配の中から形成されてきた社会的観念として「ゐなか」に注目し、裏面記載の論文を副産物としてまとめた。
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