1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05710220
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Research Field |
Asian history
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
松井 嘉徳 島根大学, 法文学部, 助教授 (00202317)
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Keywords | 封建制 / 官僚制 |
Research Abstract |
「周代」独自の権力構造の把握を目的とし、(1)いわゆる周の「封建制」の具体的理解、(2)東遷期・東周期における「封建」的秩序の変化の実態、およびその変化の意味、(3)「周代」権力構造のなかに萌芽した秦漢的権力構造-中央集権的官僚制・郡県制等-の具体的追求、の3課題を設定した。関連史料の収集・データーベース化・先行研究の検討等の作業を通して、研究課題に対して以下のような見通しを得ることができた。 いわゆる周の「封建制」は、基本的には血縁(擬制的血縁)関係を基軸とした「分節構造」として理解することができる。近年の「徳」あるいは「天命」等を対象とした思想史的研究は、この「分節構造」を強く意識したものであるし、さらに、かつての都市国家論に代表されるような「邑」制研究も、この「分節構造」論の範疇に属している。しかしその一方で、主に金文研究の分野からもたらされる官制僚制)研究の成果は、「周代」の権力構造が単なる「分節構造」ではなく、なんらかのヒエラルヒ-を志向する側面を同時にもっていたことを強く示唆している。「分節構造」論のみでは、「周代」の権力構造を十分に解明することはできないのである。私自身は、封建的要素と官制的要素を併せもった権力構造が、レベルを異にしても同じように現れるという「自己相似的構造」論を主張しているが、その両要素の組合わさり方あるいは比重の変化等の分析は必ずしも十分なものではない。今後は官制的要素の分析、より具体的には官制(官僚制)の出現、発展、そして変質過程を追求することによって、両要素の推移を検討する必要がある。
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