1993 Fiscal Year Annual Research Report
中国歌辞文学の音譜資料の記譜法及びその和本資料に関する基礎的研究
Project/Area Number |
05710274
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
明木 茂夫 九州大学, 文学部, 助手 (10243867)
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Keywords | 張炎 / 『詞源』 / 音譜 / 協音 / 倍四頭管倍六頭管 / 大曲法曲 / 停緊慢 / 軽重清濁 |
Research Abstract |
南宋張炎の『詞源』上下巻は詞の創作論としてのみならず詞の音譜資料としても重要であるが、特にその巻下「音譜」条の音楽面の創作論は、その内容が未だ必ずしも解明されているとは言えない。そこで、まず奏恩復輯『詞学叢書』本を底本として、静嘉堂文庫所蔵影元鈔本、内閣文庫所蔵江戸写本『宝顔堂秘笈続函』本等日本の所蔵本を含め、現在伝わる全23種の版本、写本を資料として複写・収集し、文字の異同を調査した。さらに従来の注釈、または詞楽・楽律・記譜法に関する研究を参照しつつ、「音譜」条の内容を検討し、以下のような結果を得た。「倍四・倍六頭管」は工尺譜の「四・六」即ち「太簇・黄鍾清」の倍管(八度下)の篳篥を意味する可能性のあること。「停緊慢」は「緊曲・慢曲」の「停声待拍」を意味するであろうこと。「丁、坑〜打〓」等の音符は巻上「謳曲旨要」に照らしてそれぞれ理解すべきこと。本条前半で「大曲・法曲」の曲調・奏法を詳説するのは所謂「摘遍」によって唐代の大曲・法曲から楽曲を独立させ、これを詞の創作に直接用いていたためであること、等々。以上の結果に基づき、「音譜」条の本文に句読を施し、校記、訓読、注、訳からなる「訳注稿」を作成し、これを詞源輪読会篇、『張炎『詞源』訳注稿(二)』に収録、印刷に付した。
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