1993 Fiscal Year Annual Research Report
欧州通貨制度での金融政策協調のあり方に関する理論的・実証的研究
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05730047
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
高屋 定美 近畿大学, 商経学部, 講師 (60236362)
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Keywords | 金融政策協調 / EMS / 政策反応関数 |
Research Abstract |
平成5年度の本研究では次のような研究実績が得られた。まずEMS参加国のマクロ経済状況を把握するためのデータベースを構築した。データの出所はOECD主要経済統計、及びIMFのInternational Financial Statisiticsである。次にイギリス、フランス、ドイツ、ベルギー、オランダ、デンマーク、ギリシャ、スペイン、イタリア各国の中央銀行の金融政策反応関数の推定をMicro TSPを用いて試算した。ここでの目的は各国中央銀行が成長率、失業率、物価などの対内目標と固定相場制維持のための為替レート安定目標(対外目標)にどの程度ウェイトを過去に置いてきたかを求めることにある。それによってEMS参加国の固定相場制維持の選好が等しいものなのか、あるいは各国間で相違があるかを知ることができる。またわれわれは金融政策の手段として、マネーサプライのケースと短期金利のケースを推定している。 またドイツ、ブンデスバンク以外の中央銀行の政策反応関数にブンデスバンクの政策変数を導入して、ブンデスバンク以外の中央銀行にどの程度の影響力がブンデスバンクがあったかも推定しているが、今までの暫定的な結果ではベルギー、オランダなどの小国では影響力があるものの、他の国に対しては有意な結果が得られていない。この点は推定方法の改善なども含めて再考の余地があると思われる。われわれの今までの研究実績では従来いわれているブンデスバンクの信認仮説は小国では成り立つものの、経済規模の相対的に大きな国では対内目標に対する金融政策目標のウェイトが大きいように思われる。したがって92年のポンド危機に現れたようなEMSの危機が各国の国内経済事情によってこれからも引き起こされる可能性はあるものと思われる。
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