1993 Fiscal Year Annual Research Report
代数的構造の上の調和解析とランダムウォークの漸近挙動の研究
Project/Area Number |
05740096
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
洞 彰人 岡山大学, 教養部, 助教授 (10212200)
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Keywords | ランダムウォーク / 調和解析 / マルコフ連鎖 / 球関数 / ハイパーグループ |
Research Abstract |
群の作用を中心とするさまざまな代数的構造の上の調和解析を応用し、ランダムウォークやマルコフ連鎖等の確率モデルの研究を行った。いろいろな構造の上のランダムウォークを統一的に理解するために、ハイパーグループの観点を重視したのが特徴である。 本年度に得た具体的な結果を記す。位相群Gの作用による等質空間Xとその上のマルコフ連鎖(Mn)を考える。(Mn)がG-不変であれば、それをG上のランダムウォーク(Wn)に持ち上げることができることを証明した。Gの作用が左からのときはG上の右ランダムウォークを考えねばならないこと、したがって、(Wn)のXへの射影のマルコフ性が一般には成立しないことなど、可換な作用の場合には現れない現象が起こる。X上のG-不変なマルコフ連鎖とG上の両側K-不変な右ランダムウォークとが1対1に対応している(KはXの一点の安定化群)というのが、主定理である。したがって、X上のこのようなマルコフ連鎖の推移確率が絶対連続であれば、それを(G,K)に付随するヘッケ環の元で表せる(または近似できる)ことになる。これはハイパーグループの考察へと自然につながるものである。 上記の結果はむしろ一般論であるが、具体的な確率モデルの考察の過程で抽出された問題である。たとえば、粒子の拡散を記述するベルヌ-イ・ラプラス模型を一般化して、粒子の重ね合わせを許容したモデルを考えた場合、拡散の様子はグラスマン多様体上のマルコフ連鎖として定式化できる。これはランクの高い対称空間なので、球関数の取扱いは結構厄介ではあるが、推移確率をヘッケ環の元としてとらえ直すことにより、古典群の調和解析に持ち込む筋道をつけることができたと思っている。
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Research Products
(1 results)