1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05740121
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
服部 哲弥 宇都宮大学, 工学部, 助教授 (10180902)
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Keywords | 拡散過程 / フラクタル / 漸近一次元拡散 / ランダムウォーク / くりこみ群 / ランダム媒質 / 分枝過程 |
Research Abstract |
本研究の目的はフラクタル上の拡散過程の新しい構成方法、即ち我々が漸近一次元拡散と呼ぶ方法の開発であった。 本研究によって、我々が以前導入したabc-gasketsというフラクタルの族について、その上の漸近一次元拡散の存在を数学的に証明した。この成果により、この方法の開発に成功し、かつこの方法が既存の唯一の方法である固定点理論に比べて有効であることを明らかにした。 本研究は次のような特徴がある: 1.既存の固定点理論が持つ制約、即ち対応するくりこみ群に非退化固定点がないフラクタルの上の拡散が構成できないこと、が漸近一次元理論では生じない。原理的に広い範囲の図形に対して拡散の存在が言える。 2.容易軸(拡散しやすい方向)を持つ媒質中にランダムな障害物があるときには拡散が等方化する可能性を数学的に具体的に示したモデルになっている。これは障害物のない空間では起こり得ないのでフラクタルの研究によって見いだされた新しい可能性である。 3.漸近一次元拡散の構成は、対応するくりこみ群の分析に基づいてその存在の可能性を着想した。くりこみ群の描像は来世紀の数学および物理学において普遍的な概念として定着するべきものであり、本研究はその概念のフラクタル上の拡散における展開の具体例を与える。 4.くりこみ群の分析から拡散の構成に至る過程で多種粒子非定常(特異的)環境分枝過程の極限定理が本質的な役割を果たす。このように特異的な分枝過程の研究はこれまで動機がないためか例がなかった。本研究は分枝過程という大きな既存の分野に新しい研究動機を与える
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