1993 Fiscal Year Annual Research Report
原子核におけるalphaクラスター連鎖構造を持つ分子的共鳴状態の研究
Project/Area Number |
05740184
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
櫻木 弘之 大阪市立大学, 理学部, 講師 (90183821)
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Keywords | 分子共鳴 / 重イオン反応 / クラスター模型 / チャネル結合法 / 原子核間相互作用 |
Research Abstract |
本研究の目的は、最近^<12>C+^<12>C系の非弾性散乱の実験で発見された共鳴構造と、^<24>Mg原子核の高励起領域に存在が予言されている「alphaクラスター連鎖構造」の関連を、直接核反応理論の立場から検証することであった。原子核の共鳴構造は一般に、原子核間相互作用の詳細に非常に敏感であるので、この種の研究には、原子核間相互作用として、信頼できる手法と模型に基づく分析が必須である。そのために、実施計画に沿い、 (1)密度依存性をもつ現実的有効核力(G行列)、具体的にはDDM3Yと呼ばれる有効核力を用いて原子核の基底状態間および種々の励起状態間の遷移ポテンシャルをフォルディング法により微視的に計算するプログラムを新たに開発した。これにより、密度依存性ならびに入射エネルギー依存性を取り入れた「微視的チャネル結合計算」が可能となった。このような試みは、今までになされたことはなく、今回がものが初めてである。 (2)「6個のalpha粒子の連鎖配位」ではないかとの報告があった、^<12>C+^<12>C系の、両方の^<12>C核が0^+_2励起状態へ同時励起するチャネルへの非弾性散乱、および、片方だけがこの状態へ励起する非弾性散乱ならびに弾性散乱を、上記の「微視的チャネル結合法」により分析した。この際、^<12>C原子核の波動関数(遷移密度分布)は、微視的3alpha模型に基づく精密なものを用いた。 その結果、今回の理論計算により、弾性散乱および非弾性散乱の角分布、並びに、共鳴的特徴を示す励起関数の実験データの特徴が、予想以上に良く再現されることが判った。また、励起した^<12>C原子核同士の分子的回転帯の交差描像によって、この共鳴的振る舞いを実体的に理解できる可能性があることも判った。このことは、必ずしも「6個のalpha粒子の連鎖配位」を仮定しなくとも、特異な共鳴構造が説明できる可能性がありうる事を示唆していると思われる。しかし、一方で、理論計算の結果は、現象論的に導入した短距離的な吸収ポテンシャルの詳細にかなり敏感であることも判明した。従って、「alphaクラスター連鎖構造」の存否の最終的な判定には、この吸収項の系統性や、実験とのより精密な比較等による、更なる研究の継続・発展が是非とも必要であると思われる。
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