1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05740240
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
中村 敏和 学習院大学, 理学部, 助手 (50245370)
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Keywords | 有機超伝導体 / ESR / NMR / g値 |
Research Abstract |
申請者は本助成をふまえ、磁場下での熱起電力測定を整備した。これにより、有機超伝導体のキャリアの性質を理解することができる。有機結晶の中には、試料依存性を示すものが有り同一試料での測定が不可欠であり、結晶に電極をつける熱起電力測定は最後に行う必要がある。現在のところ、研究対象の試料に対しての本測定には至っていない。本課題が遅れた理由は、以下に述べる新しい知見に関しての研究を先に行ったためである。申請者は代表的な有機超伝導体k-(BEDT-TIF)_2Cu(CN)[N(CN)_2]およびk-Cu(NCS)_2でESRのg値が低温で増大することを見いだした。一方、ほぼ同型のk-Cu[N(CN)_2]Brにおいては、そのようなg値の異常は見られない。室温でのBEDT-TIF錯体のg値は、BEDT-TIFカチオンのg値とドナーの配列を考慮すれば理解できることがわかった。しかし、低温でのg値の異常はBEDT-TIFカチオンのg主値の最大値を越えており、一電子の励起では説明できない。何らか集団モードによる共鳴が関与している可能性が示唆される。また、g値の異常を示すものと示さないものとではフェルミ面の形状が微妙に異なることは興味深い。このように、これらの試料では低温で、電子状態の変化が起こっていることが考えられる。また、最近の同位体効果の報告でBEDT-TIF分子の中央部を^<13>Cで置換する簡便な方法が開発された。分子中央部での^<13>C-NMRは多くの電子状態に情報が得られるものと考えられるが、申請者は通常の^<12>Cでこの合成法を用い、NMR用の試料が作成できること確認した。次年度は^<13>C同位体での試料作成を行い、上記の物質群についての電子状態を調べる予定である。またこのg値の異常がフェルミ面の再構築などに関与したものかは、本課題の熱起電力測定で明らかにできる。
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