1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05740398
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
武村 裕之 九州大学, 教養部, 助手 (60183456)
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Keywords | クリプタンド / 包接 / 大環状化合物 |
Research Abstract |
かご状化合物、1のカリウム錯体を酸で処理し金属イオンを除いた。これを脱プロトン化し、モノプロトン錯体を得た。このものにボランや、ボロンハイドライドを作用させることによる、プロトン除去や、ボランクリプテートの生成を試みたが、それらの生成は確認できなかった。次に、アンモニウム錯体の対イオンを水酸イオンにし、長時間その変化を調べたが、脱プロトン化によるアンモニア分子包接体の生成は認められなかった。従って、中性分子の包接をおこさせるためには、空孔になにも入っていないかご状化合物の合成が必要であることがわかった。そこでつぎのような試みを行った。即ち、銀錯体を合成し光やシアノイオン、硫化水素との作用を検討した。カリウム錯体と銀イオンを反応させて銀錯体を合成した。このものはハライドイオンを大過剰共存させても安定であった。言い換えると、塩化銀やヨウ化銀のイオン対をクリプタンドで安定に引き離した形の化合物が生成したといえる。この化合物は通常の光には安定だが、高圧水銀灯による光照射によりラジカル反応を起こし複雑な生成物を与えた。空の化合物は得られなかったが、この銀クリプテート自体興味深い化合物となった。硫化水素を作用させるとただちに硫化銀を析出し、2H^+・1が生成したが、同時に空の1らしきものの生成がNMRにより確かめられた。今後これを単離、同定したのち、ボランやアンモニア、アルゴンなどの分子と作用させてみたい。同じく、1の銅錯体を合成し、シアノイオン、硫化水素との反応による空の1の合成を検討している。なお、アンモニウム錯体、銅錯体の基本的物性の調査はおおむね完了した。 以上の研究により、中性分子包接体の合成の足がかりができたといえ、その合成中間体となるいくつかのクリプテートも興味深い新しい包接化合物となり、十分な結果を得たと考えている。
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