1993 Fiscal Year Annual Research Report
複数の硫黄置換基を有するピラシレン誘導体の合成とその電荷移動錯体の性質
Project/Area Number |
05740434
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
谷 弘幸 愛媛大学, 機器分析センター, 助手 (00217118)
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Keywords | ピラシレン / [12]アヌレン / ドナー / 電荷移動錯体 / 有機電導体 / X線結晶構造解析 / 塩化テルル(IV) / 縮合多環化合物 |
Research Abstract |
ピラシレンは,フラーレン(C_<60>)の骨格の一部であり,周辺[12]アヌレン構造を有する平面分子で,通常の縮合多還芳香族化合物とは違った挙動を示すことが知られている。[12]アヌレンは,酸化状態(ジカチオン)または還元状態(ジアニオン)において,ヒュッケル則に基づく芳香属性の寄与が大きくなるため,その電荷移動錯体を合成する上で,ドナーにもアクセプターにも成り得る分子である。また,この種の電荷移動錯体は,良好な有機伝導体となることが期待されるにもかかわらず,このようなピラシレン誘導体を用いた電荷移動錯体の合成及びその性質については,ほとんど研究がなされていない。 本研究は,このピラシレンの周辺に硫黄官能基を導入した化合物を合成し,この化合物をドナーとして用いた新規電荷移動錯体を合成し,その機能評価を行なうことを目的とする。 環状ケトンから得られたエチレンジチオアセタールの対応するエチレンジチオ修飾芳香族化合物への簡便でかつ高効率な環変換反応を見い出している。また,この方法を利用することにより,従来,合成が困難とされていたピラシレン骨格を容易に構築することができるようになった。エチレンジチオ修飾ピラシレン誘導体を合成し,その電荷移動錯体の性質について検討した。 1)ピラセンを酸化して得られるピラセンジオンビスエチレンジチオアセタールに塩化テルル(IV)を反応試剤に用いて環拡大反応させることで,ピラシレン骨格を有するビス(エチレンジチオ)ピラシレンを合成した。 2)1)で合成した化合物と様々なアクセプター類との電荷移動錯体を合成し,X線構造解析によってその結晶構造を明らかにし,得られた錯体の電導特性について検討したところ,最も高い臨界温度を持つ有機超電導体として知られるビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレンのトリヨード錯体と同様の結晶構造を持つビス(エチレンジチオ)ピラシレンのトリヨード錯体が得られ、興味深い二次元的な電導性を示すことがわかった。 さらに,ピラシレン環上に電子供与基を導入すれば,よりドナー性を高めることができ,電子求引基を導入すれば,よりアクセプター性を高めることができるため,得られた化合物を原料に用いて,他の新規ピラシレン誘導体を合成することを検討している。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] H.Tani et al.: "Radical cation salts of 2,3,8,9-tetrahydro-1,4,7,10-tetrathiachrysene" Chemistry letters. 1055-1058 (1993)
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[Publications] H.Tani et al.: "Synthesis and properties of 1,2,5,6-bit(ethylenedithio)pyracylene" Chemistry letters. (印刷中). (1993)