1993 Fiscal Year Annual Research Report
有機14族元素化合物の選択的反応を指向した新規反応系の開発
Project/Area Number |
05740442
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
西垣内 寛 島根大学, 理学部, 講師 (00212118)
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Keywords | 位置選択的反応 / 立体選択的反応 / アリルスズ化合物 / ルイス酸 / 塩化亜鉛 / 溶媒効果 / 環状遷移状態 / アリル化反応 |
Research Abstract |
アリルスズ反応剤(シンナミルスズ、ペンタジエニルスズを含む)とアルデヒドおよびケトンとの反応を中心に検討した。反応の活性化剤としては、中性に近い金属塩(弱いルイス酸)として、種々の過塩素酸塩や塩化亜鉛を主として用いた。その結果、従来用いられている強いルイス酸を活性化剤とした反応系とは異なった、新しい反応系を構築することができた。特に顕著な成果を示す。 ペンタジエニルスズ-塩化亜鉛あるいは過塩素酸マグネシウムの系では、これまで困難であったペンタジエニル基の立体障害の大きなr 位でのアルデヒドおよびケトンへの位置選択的導入が可能になった。特にエーテルやアミド系容媒のように、溶媒の極性を高くするとその選択性も向上した。この反応においては、窒素雰囲気下、低温といった特別な操作は必要なく、単に室温で撹拌するという非常に簡便な点も特徴である。 シンナミルスズ-塩化亜鉛の系では、従来のルイス酸の活性化によるアルデヒドへの付加反応での立体選択性とは異なった生成物(anti体)を選択的に得ることができた。また、従来法である強いルイス酸を用いて得られる生成物が、これまで信じられているのとは逆のsyn体であると判明したことも重要である。ここでも、極性の高い溶媒で高い選択性が発現した。 このように極性の高い、配位力の強い溶媒中で、金属塩(ルイス酸)によるカルボニル基の活性化が可能であるということは注目すべき結果である。さらに、活性化剤(ルイス酸)や溶媒を変えることで、容易に反応の選択性が制御できるということは合成化学的にも興味深い。また、立体の定まったアリルスズを用いて上述の反応を行うことで、これらの反応がルイス酸反応にと特微的な非環状遷移状態ではなく、環状遷移状態を経由して進行していることも明らかになり、反応機構的にも新しい反応系であることが示された。以上の結果は、現在論文として投稿中であることも付記しておく。
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