1993 Fiscal Year Annual Research Report
イトミミズ神経分泌系に存在するインシュリン・グルカゴン様物質の作用に関する研究
Project/Area Number |
05740492
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
蛇穴 治夫 北海道教育大学, 教育学部・旭川校, 助教授 (90175399)
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Keywords | 環形動物 / 貧毛類 / 神経分泌 / 神経ペプチド / グルカゴン |
Research Abstract |
イトミミズの脳と腹部神経節にはインシュリン及びグルカゴン様物質をそれぞれ含む細胞がある。本研究では、グルカゴン様物質がイトミミズにおける糖類の代謝と関係があるのかどうかを調べた。その結果、 1.飢餓状態においた個体、断頭した個体、通常の飼育下にある対照個体における血体腔液中のグルコース濃度の変動を、液体クロマトグラフィーを用いて2週間にわたり追跡した結果、どの個体でもグルコース濃度がほぼ一定に維持されていた。 2.グルカゴン様物質含有細胞の分泌活動が上記実験中にどのように変化するのかを、6時間毎に虫を固定して電顕により調べた結果、対照群の細胞は常に分泌顆粒で満たされた状態が続いていたのに対し、飢餓個体群では祖面小胞体とゴルジ体がよく発達し分泌顆粒も共存した状態が続いていた。また、断頭個体では、断頭後4日までほぼ24時間周期で祖面小胞、ゴルジ体が発達した状態と分泌顆粒を蓄えた状態を繰り返すことがわかった。 3.グリコーゲン貯蔵器官を組織化学的、電顕的に調べた結果、消化管を取り囲んでいる黄細胞塊がそれに当たることが確認され、飢餓及び断頭個体では次第にグリコーゲン顆粒が黄細胞の細胞質から消失していくことも電顕的に確かめられた。 4.黄細胞を含む体の断片をL-15培地で培養しながら、それにグルカゴン(哺乳類の製品)を加え、グルコースが黄細胞から培地中に放出されてくるかを調べたが、今回は対照群と比較してグルコースが培地中に増えたという結果は得られなかった。 以上の結果から、飢餓及び断頭個体における血糖の維持には黄細胞のグリコーゲンが使われ、形態的にはグルカゴン様物質が黄細胞のグルコース放出の刺激になっているらしいことが示唆されたが、培養実験からは残念ながらそれを裏付ける証拠は得られなかった。
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