1993 Fiscal Year Annual Research Report
硫化亜鉛薄膜中のツリウムイオンの発光およびエネルギー伝達過程の解明
Project/Area Number |
05750036
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
原 和彦 東京工業大学, 工学部, 助手 (80202266)
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Keywords | 硫化亜鉛薄膜 / ツリウムイオン / エネルギー伝達過程 / フォトルミネッセンス / 時間分解フォトルミネッセンス / 有機金属気相法 |
Research Abstract |
有機金属気相法によりガラス基板上に作製したZnS:Tm薄膜について、Tm^<3+>イオンの発光特性を解析することにより、その発光およびエネルギー伝達過程に関する知見を得た。特にTm^<3+>イオンの478,796および802nmを中心波長とする発光帯に注目し、35Kまたは2Kにおけるフォトルミネッセンスの強度および立ち上がり・滅衰の時定数のTm濃度依存性を検討した。主要な結果を以下にまとめる。 1.478nm発光帯: 発光の強度はTm濃度がおよそ0.005at%までは増大するが、さらにTm濃度を増すと減少に転じた。このことを、蛍光体粉末において最も高い揮度が得られるTm濃度が約0.1at%であることと比較すると、薄膜試料においては著しく低い濃度から濃度消光が生じることがわかった。また滅衰の時定数は発光強度が減少するTm濃度範囲で濃度の増加とともに減少する傾向にある。これらの結果から、Tm濃度の増加に従い励起準位の^1G_4からこの発光に寄与しない過程で緩和する確率が高くなることを明らかにした。 2.796nmおよび802nm発光帯: 796nm発光帯については、本研究で測定を行った0.2at%までの濃度範囲では強度の減少はみられなかった。一方、802nm発光帯はTm濃度に対して478nm発光帯と同様の傾向を示した。この結果から、これらの赤外発光の遷移過程について、802nm発光帯は478nm発光帯と始準位を同じくする^1G_4→^3H_5、796nm発光帯は^3F_4→^3H_6と同定するのが適当と考えられる。さらに796nm発光帯については、Tm濃度の増加に従い立上りの時定数が減少することから、この発光が励起される確率が高くなることを明らかにした。 以上の結果から、青色発光の励起準位^1G_4から赤外発光の励起準位^3F_4へ緩和する過程が存在することが予想され、その確率がTm濃度の増加に伴い高くなることを明らかにした。これらの過程としては、Tm^<3+>イオン間の交差緩和や欠陥準位を介したエネルギー伝達である可能性が高い。
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